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ショウジョウバエの味覚受容細胞特異的遺伝子のスクリーニングと同定

広実朋子、谷村禎一

(九大・理・生物)


 ショウジョウバエの味覚器は唇弁、肢、翅に感覚子として存在する。感覚子基部にある4個の味細胞は、神経突起を感覚子先端の開口部に伸ばしている。我々は、ショウジョウバエの味覚受容体遺伝子を単離するために、味覚特異的遺伝子に富むcDNAライブラリーを作製する方法を開発した。まず、味細胞以外の細胞の数と種類が比較的少ない翅を用いることを検討した。翅の感覚子先端の開口部から蛍光色素DAPIを浸透させ、感覚子基部に存在する味細胞の核の染色を行ったところ、唇弁と同様4個の味細胞をもつことがわかった。電気生理学的に調べたところ糖に対する応答がみられた。ライブラリー作製のために2種類の突然変異体の翅を用いたサブトラクション法をとりいれた。poxnは化学感覚子が完全に欠失し機械感覚子のみからなる。cutは機械感覚子が減少しほとんどが化学感覚子である。cutで発現している遺伝子からpoxnで発現している遺伝子を差し引けば、味覚特異的な遺伝子が得られる。2つの突然変異体の翅から得たcDNAをPCR法によって増幅後、サブトラクションを行い、cDNAライブラリーを作製した。その後、differential screeningにより22個の化学感覚細胞特異的なcDNAクローンを単離した。単離したクローンは、唾腺染色体上へのin situ ハイブリダイゼーションによりマッピングを行い、さらに組織切片へのin situ ハイブリダイゼーションにより、1つのクローンは感覚細胞の細胞体で発現していることを確認した。