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Xzic3:アフリカツメガエルの神経および神経堤発生における primary regulator としての役割について

永井健治、中田勝紀、有賀純、御子柴克彦

(理研.分子神経)


 両生類胚では、オーガナイザーからの神経誘導シグナルにより背側外胚葉の中枢神経系への発生運命が決定され、シグナルを受けない腹側外胚葉は表皮へと発生する。さらに両者の境界領域より神経堤細胞が発生してくる。近年これらの組織の発生、分化の分子機構に関する知見が集まりつつあるが未だ不明な点が多い。

 我々は昨年度の本大会においてマウスZic が卵筒胚(7d.p.c.)において神経外胚葉に発現していることを報告した。そこで、Zic 遺伝子の初期神経発生における役割を明らかにするため神経誘導時に実験発生学的操作が可能なアフリカツメガエルよりZic 関連遺伝子(Xzic3)を単離、解析した。in situ hybridization を行った結果、Xzic3 は初期原腸胚では予定神経領域全体に発現していた。その後Xzic3 の発現は中枢神経系背側ならびに神経堤で認められた。両生類では原腸胚初期にchordin, noggin,follistatin などのオーガナイザーから分泌されるシグナルにより神経誘導が起こり、しばらくして神経細胞分化に関わる種々の転写因子が発現してくることが知られている。発生過程におけるXzic3 とこれらの遺伝子の発現開始時期をRT-PCRにより比較したところ、chordin の発現開始から30分後(St.9.25)、NeuroD, XASH-3, XATH-3, XlPOU 2 などの神経分化に関わる因子の発現開始よりも早い時期にXzic3 の発現が始まることが明らかとなった。chordin は神経分化抑制因子BMP4 と直接結合しそのシグナルを遮断することが分かっているが、Xzic3 がBMP4 のシグナル遮断により発現誘導されるかどうかを検討するため、アニマルキャップの解離培養および初期胚へのドミナントネガティブBMPリセプターmRNAの微量注入を行った。その結果、いずれの場合においてもXzic3 の発現誘導が認められ、Xzic3 がBMP4シグナルの遮断により直接誘導されることが示された。さらに、初期胚にXzic3 mRNAを過剰発現させたところ神経管の肥大が観察され、神経マーカーであるNCAM の発現領域も拡大していた。一方、Xzic3 mRNAを過剰発現させたアニマルキャップでは、現在両生類で知られている神経分化に関わる因子(Neurogenin, NeuroD, XASH-3, XATH-3, XlPOU 2)全ての発現が誘導された。以上の結果はXzic3 が神経誘導シグナルから神経細胞分化へと続く一連のカスケードのprimary reguratorである可能性を示している。Xzic3 の神経堤発生における役割に関しても新しい知見が得られたので合わせて報告したい。