1B1515


ショウジョウバエの初期発生過程におけるミトコンドリア small ribosomal RNA (mtsrRNA) の挙動

°樫川真樹1、網蔵令子1、3、小林悟1、2、3

(筑波大学・生物科学1、遺伝子実験センター2、TARAセンター3)


 ショウジョウバエの生殖細胞は初期胚の後極に形成される極細胞に由来する。極細胞の形成には胚後極の極細胞質中に局在する因子が必要である。この因子の一つとしてミトコンドリアlarge ribosomal RNA (mtlrRNA) が同定されている。mtlrRNAはミトコンドリア内で転写され、ミトコンドリア内のリボソーム大サブユニットを構成するRNAとして知られていた。しかし、mtlrRNAは胚発生過程の初期に、極細胞質中でのみミトコンドリアの外に移送され、極顆粒と呼ばれる構造物に局在することが明らかとなっている。極顆粒は極細胞形成に必要な因子が局在する構造物であることから、この顆粒上のmtlrRNAが極細胞形成に関与することが強く示唆される。

 今回、私たちはミトコンドリア内のリボソーム小サブユニットを構成するミトコンドリア small ribosomal RNA (mtsrRNA) の初期胚における分布を電子顕微鏡レベルで詳細に調べた。その結果、mtsrRNAは、mtlrRNAと同様に、極細胞質中でのみミトコンドリアの外に移送され、極顆粒上に局在することが明らかになった。このことは、mtsrRNAが、mtlrRNAとともに極細胞形成に関与している可能性を示唆している。