P002


細胞性粘菌 Dictyostelium discoideum において接合子形成後に発現する遺伝子の単離

○ 飯島美帆 1、饗庭一博 2、田仲可昌 1、漆原秀子 1

( 1筑波大 生物、 2新技術事業団土居バイオアシンメトリプロジェクト)


 細胞性粘菌 Dictyostelium discoideum のマクロシスト形成は有性生殖における細胞間相互作用を解明するための優れたモデル系である。本研究では、 D. discoideum の有性的細胞融合とその後の発生の制御のメカニズムを分子レベルで解明することを目的として、 differential display 法を用いて細胞融合によって発現が誘導される遺伝子の単離を試みた。約 3000 の cDNA 断片について検討し、最終的に細胞融合後に新たに発現する mRNA 二種を同定することができた。そのうちの一つ G9b について詳細な解析を進めたところ、 G9b 遺伝子は接合子形成後3時間以降に発現が見られ、12 時間後までほぼ一定の発現量を保っていることがわかった。 differential display 法で得られた cDNA 断片をプローブに用いて cDNA ライブラリーからのスクリーニングを行い、 G9b の配列を含む cDNA をクローニングした。 G9b 遺伝子には TAA の特徴的な繰り返しがあり、 DNA と相互作用する機能を持つと予想される。また、この遺伝子は子実体形成過程でも時期特異的に発現しており、有性的、無性的発生経路の両方で共通に働く重要な遺伝子であることが考えられる。