植物発生学の試みーシロイヌナズナ花序形態形成研究

米田好文・高橋卓・半澤芳恵  (北大・生物)


 アブラナ科植物シロイヌナズナは、発芽後栄養成長期ではロゼット型の植物体制を採り、生殖成長へ転換するとともに茎が伸長しアブラナ科植物特有の植物体制になる。すなわち、無限に伸長する花序で先端部は総状花序(ラセミ)と呼ばれる花を付ける茎を伸長していく。このいわゆるボディ・プラン変換の過程に着目して研究している。まず、花序伸長・形態変化の突然変異体を分離し、acaulis, corymbosaなどの遺伝子支配を推定した。その典型のacaulis5突然変異体は、栄養成長期は表現型が明らかではないが、生殖成長への転換後、花茎伸長が停止する。形態の観察から、茎の伸長欠損は細胞数ではなく細胞自体の伸長欠損に原因することを推定した。植物の形態変化をもたらす細胞伸長は、細胞壁の伸長と関連することが特徴で、細胞壁成分のつなぎ換え・液胞の進展が重要と考えられる。そのような過程に関連した遺伝子群が発現抑制されていることを明らかにした。この知見を基に、動物中心の発生学の研究を、植物でも発生学として展開できたらと希望している。