ヤコウチュウの触手運動

左のビデオはヤコウチュウの触手運動を写したものです。丸い細胞体から中央に出っ張って見えている細長い構造が触手です。我々の心臓のように、自発性の活動電位により動きが制御されています。聞こえている音の高さが、ヤコウチュウの触手運動を制御している膜電位変動に対応しています(高い音がよりプラスの電位で、低い音がよりマイナスの電位)。

ヤコウチュウの触手運動制御機構へ
生物発光で有名なヤコウチュウは、かなり大きな単細胞生物です。直径が0.5mmほどにもなりますが、細胞の大部分は液胞で占められており、原形質はたいした量ではありません。大量発生すると、赤潮の原因にもなります。ヤコウチュウはゾウリムシ等の良く泳ぐ生物とは異なり、自分で泳いで移動する事ができません。波のまにまに漂うといった所でしょう。この生き物は、移動する力はありませんが、良く動く触手を持っています。触手の先からは粘液が分泌され、この粘液に餌となる緑藻等(自然状態ではいろいろなものを食べるのでしょうがよくわかっていません。これは実験室で飼うときの餌です。)をくっつけて集め、最終的に口から細胞内に取り込みます。えさを良く食べて、食胞をたくさん持っているヤコウチュウは培養条件下では容器の底に沈みます。腹を空かせてくると、次第に浮き上がってきます。自然条件でも、このような垂直移動を繰り返しているのかもしれません。

 ヤコウチュウは細胞が大きい事から、初期の電気生理学的実験に多く利用されてきました。その結果、たくさんの面白い性質を持っていることがあきらかとなっています。一番の特徴は、一つの細胞が、全く性質の異なる2種類の膜電位反応を発生する事でしょう。上のビデオに示しましたが、一つは、触手の運動を制御する自発性の膜電位反応で触手調節電位と呼ばれます。もう一つは、有名な発光現象を制御する、刺激に応じて生じる発光誘起電位と呼ばれる活動電位です。

ヤコウチュウの触手運動制御機構へ

ヤコウチュウの発光制御機構へ

参考文献