離層細胞分化メカニズム

 葉,花,果実などの器官の老化が進むとやがて器官脱離が生じる。器官脱離は老化と共に起こるとされるが、十分に活発な器官であっても、数層からなる離層細胞がすでに発生過程で形成されていることが多い。離層の組織は細胞壁の薄い細胞群(離層細胞)からなり,葉柄などの軸を横切って形成される。離層が形成されるとき、内部形態が複雑に変化するが、これは細胞分化はもちろん、細胞分裂をも含む大がかりな発生過程の結果である。器官脱離のおこる際,エチレンの誘導により、離層細胞の細胞間中層が、ペクチン分解酵素などの細胞壁分解酵素系により溶解して分離し,通導組織も断ち切られる。器官脱離過程における生理現象とメカニズムは、現在までに様々な視点から解明が行われてきているが、この過程のターゲットとなる離層細胞の発生・分化については、未だ明らかとされていないことが多い。

 離層組織は構造的に弱いと考えられるが、タバコ花柄の離層は,蕾や花では落花しやすいのに対して、果実では植物体本体と強固に接着していることから、離層組織の接着を調節するメカニズムが存在すると考えられる。本研究では,離層構造を強化する機構の一つの候補として微量必須要素であるホウ素に着目して研究を行っている。また、花のステージが落花に及ぼす影響を調べ、離層組織の強化メカニズムを解明することが本研究の目的である.

 また、現在、トマトの離層が形成されない変異体jointlessおよびJOINTLESS遺伝子を用いて、離層細胞の分化過程を詳細に解析し、また、マイクロアレイを行うことで、離層細胞分化過程における様々な遺伝子の動態を調査することを計画している。本研究により、器官脱離現象の根幹である離層細胞の形成メカニズムが解明できることを期待している。

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