国際交流


 マンチェスターだより   【派遣留学生からのメッセージ】

 2004年9月〜2005年6月派遣留学生

 ・本木正人

 ・松本結実

 ・小澤 愛 マンチェスター生活(4ヶ月が過ぎて)

 ・小澤 愛 Language exchangeについて ―語学を学ぶひとつの方法として―


生物学類4年 本木正人

 おそらく、この体験記を読んでくださっている方は、少なからずマンチェスター交換留学に興味を持っている方だろうと思います。ですから、少しでもこのレポートが有意義なものになるように、今回ではそういった方への情報発信を第一として進めて行きたいと思います。
 まず、一番初めに耳に入れておいて欲しい事は、これまでマンチェスター大学への交換留学の選抜試験は、決して狭き門では無かったと言うことです。この事は同じくマンチェスター大学と交換留学協定を結んでいる、名古屋大学、関西学院大学の競争率が、どちらも4倍前後であるのに対し、わが筑波大学は、「今年の応募は多いのでは?」と毎年言われながらも、つい近年まで需要と供給のバランスはやや供給のほうに傾いていたほどです。
また、応募者全員が完璧な英語の資質を備えていたかと言われれば、自分のケースで明らかであるように、そうではないと言うのが答えになると思います。
 つまり、現時点で「留学といっても、自分にそんな資格があるのだろうか?」と尻込みをする必要は全くないということです。
 他の方の体験記を参照していただくことをお勧めしますが、マンチェスターは決してレベルの低い大学ではありません、今年度のThe Times紙における全世界の大学のランキングでは、ここ、マンチェスターは、全世界43位に位置し、これはイギリスでは六番目の評価を受けています。(日本ではわずか東京大学(12)と京都大学(29)の二校のみがトップ50入りをしています。)この評価が絶対というわけではありませんが、一つの目安として紹介させていただきました。
 このような高い評価を受けている大学で学ぶことの出来るチャンスを生かすべきである、と前向きに考えて欲しいと思います。
 また、この交換留学を終えた先輩方の何人かは海外の大学院に進学していらっしゃる方がおり、その比率は交換留学生全体で見ても低いものではありません。もし、これを読んで下さっている方が将来海外への院留学を考えているのであれば、それまでの足場作りとしてこの留学を利用するのも悪い話ではないと思います。
 海外留学と聞くと、どうしても英語が第一義になってしまいがちですが、事、このマンチェスターに関しては、率直な意見を言わせていただくと、本人の「意思(目標)」が最も重要な要因になると思います。もちろん現地へ行ったからといって、ゼロから飛躍的に英語が伸びるはずも無いので、ある程度の英語力は必要であると思いますが。
 自分はなぜマンチェスターへ行きたいのか?
 始めは単なる興味で始まっても構わないと思います。
 しかしながら、この理由付けをはっきりさせないまま行くのでは、おそらくこの留学中に始めに抱いていた淡い海外留学の響きへの期待というものは、現実を見ることで、自分が思っているほどでもないことに気づくと思います。
 語学に関して言えば、一年、正確には十ヶ月と言う期間は正直に言って、ヨーロッパの人でも自分の思うように話せるまで二年はかかると言われるくらいの中で、イギリスに行けばそれだけで英語が出来るようになると思い込みがちですが、全くそんな事はありません。現に、こちらに一年以上いる日本人の方々と会っても、いかに日本人が英語を習得するという事が大変なのかを実感させられます。
そして、これはマンチェスター留学で最も不利な点であると自分が思うのは、所属する研究室が自分の希望と合うかどうかは、行くまで分らないという点です。筑波大の研究室であれば、直に研究室を訪ね、教官、院生と話し、ほぼ自分の満足に合う研究室で、自分が望む研究が出来ると思います。
自分のケースに関して言えば、事前に目星をつけておいた二つの研究室からは、どちらも
受け入れる事が無理であるらしく、それに近い分野で研究をしている別の教官が引き取ってくれました。
幸いにも、現在所属しているMartin Baron研究室では、メンバーに恵まれ、充実した日々を送る事が出来ています。しかし結果として言える事は、自分が元々入ろうとしていた研究室には入れなかったということです。
 海外生活は楽しいことばかりではありません、反対に辛い事の方が多いのではないかと思います。そのような時、自分が困ったり、嫌になったりした時に、何が自分を支えてくれるかといえば、友人や家族もそうですが、一番深いところでは、自分の立てた目標に向かうという意思だと思います。
与えられた課題をこなして帰ればよいという事と、自分の中の目標を達成して帰ると言う事の違いは、留学中に、また帰国後に大きな違いになって現れるのではないかと思います。
 以上のようなことを踏まえ、マンチェスターへ行くということを考えるときに、一つ考えて戴きたい事は、その留学だけに焦点を絞って考えるのではなく、自分の将来、これからの五年間、あるいは十年間のプランの中で、この留学をどう位置づけるか?と言う見方をして欲しいという事です。そうすれば、このマンチェスター交換留学で何を得るべきか?なぜマンチェスターへ行くのか?という事が多少なりとも見えてくるのではないかと思います。
 もう少し現地の様子を詳しく知りたいという方は、漆原先生に別紙で送ってありますので尋ねてみてください。
このような長い文に最後までお付き合い戴き、ありがとうございます。


生物学類3年 松本結実

 10月の終わりに開かれるハロウィーンパーティーからはイベントが目白押しです。11月5日にはBonfire Nightがあり、その次の週の週末にはRemembrance Sunday、さらにその2週間後にはクリスマスマーケットが約一ヶ月間開催されています。
 ハロウィーンパーティーではさまざまなパブが独自のイベントを開いていました。私は宿舎内のパブにフラットメイトといったのですが、そこではベストドレッサー賞を決めたり、フェイスペインティングのプロを招待して希望する学生に無料でフェイスペイントを施したりしていたりしました。(写真:フェイスペイント後のフラットメイトと一緒に) 日本ではハロウィーンにパーティーをすることはあまりありませんが、マンチェスターではパーティーを開いているパブに友人と行くことが一般的なようです。パブには個性的な仮装をした人々が大勢おり、また、パブ内の飾りつけやバーテンダーの服装も普段とは一味違い、ハロウィーンを強く意識したものでした。

 ハロウィーンからBonfire NightにかけてはReading Weekで学部生が休み中だったこともあり、毎晩花火が打ちあがりとてもにぎわっていました。
Bonfire Nightについて
 1603年以降エリザベス女王T世の息子のジェームス1世がイギリスを統治していました。しかし、彼がエリザベス女王同様、宗教に関する拘束を緩めず、そのことに落胆したGuy Fawkesがロンドンの国会議事堂を爆破しようと計画しました。しかし爆破直前にその計画が政府に見つかり、彼が逮捕されました。そして現在では、彼の身柄拘束によりイギリスの平和が守られたことを祝って、逮捕された日(11月5日)に花火を打ち上げているそうです。また、花火と同時にBonfireといって、直径20メートルほどの大きなキャンプファイヤーのようなものも燃やされます。(写真)これはGuy Fawkesが拘束され刑務所に入れられたときに彼の彫像が燃やされたことを表現しているそうです。(めでたし、めでたし。)
 
 11月5日にはマンチェスター内のさまざまなところで花火が打ち上げられており、フラットから4箇所の打ち上げ花火を見ることができました。友人達とそのうちのひとつの会場に行ったのですが、その会場には花火の打ち上げ、Bonfireとともに、移動式遊園地も併設されていました。イギリスでは遊園地がひとつのところに常にあるのではなく、イベントのたびにその会場のすぐそばに仮設の遊園地がおかれるようです。11月のラマダン明けのお祭りの際にも大学のそばのイスラム教の人々が多く住む地域に仮設遊園地が建設されていました。

 Remembrance Sunday (11月11日に一番近い日曜日。今年は14日)には市役所の前で戦死者の弔いパレードが行われました。この日は第一次世界大戦で命を落とした兵士の名前をポピーの造花でできているリースに書き、戦争の恐怖や悲しみを思い出し、二度と戦争を起こさないように自分たちの意識を高めることを目的としているそうです。この式は各集落ごとに行われ、その集落での戦死者の名前を書くそうです。また、市役所の前のパレードでは、30代から60代頃の男性達が伝統的なスコットランドの民族衣装を着て、バグパイプ等を演奏していました。一度は聴いたことのあるような曲の演奏が多く、市役所の前には白山の人だかりができていました。この追悼式の3週間ほど前からは募金も集められ、この収益金は近年戦争が行われていた国々への復興援助金や第一次、第二次世界大戦で戦死した人々の家族への援助金として用いられます。この募金をすると、ポピーの造花のバッジがもらえ、募金週間には街中やテレビでそのバッジを胸元につけている人の姿を頻繁に目撃しました。

 11月の終わりからクリスマスにかけてのクリスマスマーケットは主にドイツのものを売っています。子供用のおもちゃやガラス製品、アクセサリー、食べ物等が主流で、ひとつのテントに一軒のお店が入っており、歩行者天国の上にテントが列をなして建っています。一風変わった日本の夏祭りのようなイメージです。マーケットに来ている人は、家族や自分のためにプレゼントを買っていたり、普段とは異なる町の様子を眺めていたりもしました。やはりクリスマスが一年の中でもっとも大きなイベントのようで、ハロウィーン終了とほぼ同時に街の中にクリスマスツリーがいくつも現れ、道端で演奏される音楽もクリスマスソングが中心になりました。道を歩いていても街はクリスマス一色で、イルミネーションがとても煌びやかです。イギリス人にとってはクリスマスは日本の正月に当たる程重要で、どの家庭も必ず家族全員で集まって家族全員が必ず満腹になるように普段の2倍以上の量の食事を作ってパーティーをするそうです。

 ということで、マンチェスターでのイベントについて述べてきましたが、ここで小澤さんにバトンタッチしたいと思います


・マンチェスター生活(4ヶ月が過ぎて)

生物学類3年 小澤 愛

はい、バトンタッチされました。
まず始めに、戦没者慰霊祭について補足したいと思います。ポピーが象徴となっている理由についてです。いくつか説があるのですが現在最も主流な説を紹介します。第一次世界大戦においてイギリス軍にとって最も激戦で多くの兵士が命を落としたのが1915年にベルギーのフランドルで起こった戦いでした。日本にとっては戦争といえば第二次世界大戦を思い浮かべますが、イギリスでは第一次世界大戦のほうが大きな出来事として残っているようで、The Great Warと呼ばれています。激しい争いによって焼け野原になり多数の死者が横たわっていたその地に、戦争直後真っ赤なポピーが一面に咲き乱れたそうです。その光景から第一次大戦中の最も有名な詩が作られるほどそれは特徴的で、これにちなんで後にポピーが戦死者のシンボルとなったそうです。
さて、イギリスで一般的に行われているイベントについては松本さんが十分書いてくれたので、私は日常の生活について書きたいと思います。
ここで1週間の過ごし方をご紹介します。
月曜から金曜までの主役は研究室です。定められた活動時間は一応9時から17時までですが実際は自分に任せられます。課題を先生に与えてもらい実験計画を自分で立てて進めていくので。ボスの先生は毎日17時には誰がなにをやっていようとも帰っていきます。奥さんと子供を迎えに行くため残業はできないと...。他のメンバーも17時にはほとんどいなくなります。残っていようものなら、あんまり長く居すぎないようにと言われてしまいます。やることをやったらあとは自分の時間を楽しむ、というイギリス人気質を目の当たりにしています。
研究室が終わると家に帰り、フラットメイトと夕食をともにすることが日課となっています。フラットとはルームの次に大きい単位で、共同生活をする部屋の集まりです。そのフラットが20−30個集まってハウスになり、それらハウスが数棟、寮の敷地内に建っています。私はの寮は大学敷地内のやや南に位置し、私の研究室のある建物まで徒歩5分と非常に恵まれた場所にあります。Manchester大学は国内でも有数の規模を誇る学生寮を保有しています。2004年11月にUMIST大学と合併したことでさらに数が増加しました。大学敷地から約3km以内におよそ40ヶ所散在します。その他に私有の寮も多数あり、大半の学生が寮生活をしています。そのほかには友人同士でひとつの家を借りて共同生活を送っている場合もあります。
私のフラットはイギリス、イタリア、デンマーク、オランダ、中国、ヨルダンと、1人以外みな留学生で、私と同じ1年間の滞在です。(私のフラットに限らずマンチェスターではヨーロッパ圏の学生を多くみかけます。ヨーロッパには“エラスムス”という、大学のある一定期間をヨーロッパ内の自分が希望する国へ留学することができるプログラムがあるそうで、地理的に近いこともあり比較的来ることが簡単なようです。)
食事時になるとキッチンからは様々な香りがしてきます。やはり一番の話題は料理です。こんなにも国が違う人間がそろっているため話をしだすと新しいことばかりで本当におもしろいです。時には自分の国の料理を振舞ってパーティーをしたりもします。私も巻き寿司やおにぎり、肉じゃがなどを作りましたが、意外にも好評だったのは、よく世界で知られている日本料理よりも普段日常的に食べているものだったことには驚きました。また、フラット会議を開いて共有物の使い方や掃除について話し合いを設けました。筑波の寮と比べるとはるかにアットホームで、友達というよりむしろ家族のような感覚です。時にはもちろん、理解しあうのに難しさを感じることもありますが、そういった問題も長く一緒に暮らしていくからこそ生じるのであってお互いを解しあうために必要なのだと思っています。
<フラットメイトと>
そして待ちに待った週末。金曜、土曜の夜は寮に人はほとんどいません。私はフラットメイトとパブやクラブに行くことが多いです。驚いたことに寮、大学の施設の中にもパブはありますし、周辺や街の中心地に行けば内装、音楽、客の年齢層など本当に多種多様な店がいたるところにあります。あまりに数が多すぎて自分の気に入った店をみつけるのは簡単なようで難しいかもしれません。
土曜、日曜はInternational societyという留学生のための団体が企画する週末小旅行に参加したり(先日は有名なX’masマーケットに行きました)、イギリス人の友人の家にホームステイさせてもらったりもしました。そして日曜の夜になると辺りも静かになります。
簡単ですがこれがこちらでの暮らしです。現在こちらに来て4ヶ月が過ぎ、生活には慣れたと感じています。しかし毎日、研究室でもフラットでもどこかへ出かけてもまだまだ新しい刺激がたくさん転がっているので好奇心が尽きることはありません。


・Language exchangeについて ―語学を学ぶひとつの方法として―

生物学類3年 小澤 愛

 ここManchesterは多種多様な国からの留学生が勉強に来ているため、彼らにとってはもちろん、現地の学生にとっても語学を学ぶ恵まれた場所となっています。Language exchangeとは、語学交換、つまり、異なる母国語を持つパートナーとお互いの言語を教えあうというものです。ほとんどがボランティアで、学校を通したものではありません。多くの留学生が1人、もしくは数人のパートナーを持っています。行う頻度や場所、時間もパートナー間で決めるため個人差がありますが、週一回くらいほどが主流なようです。
 私は現在、英語のパートナーが2人、イタリア語が1人います。英語パートナーのうち一人はイギリス人でかなり流暢に日本語を話せるため、日常会話をしながら時に日本語、時に英語でといった感じです。もう一人は学校で初級の日本語クラスをとっているシンガポール人なのでまだほとんど会話はできないため、日本語の個人授業です。主にクラスで出された課題となっているテーマを話題に話をします。時に宿題やテストについての質問を受けたりもします。イタリア語の相手はフラットメイトのイタリア人です。まだお互い初心者なので基本的な会話を教えあうというという形です。この場合、説明の際、日本語⇔英語⇔イタリア語というように2つの言語の間に英語をはさまなければいけない点で少し難しさを感じることもあります。
 Language exchangeのよいところは、それが“授業”と“友達”の中間の関係、というところだと思います。つまり、授業であれば一方的に教えられる面が強く、話す内容も限られてきます。また、おもしろみに欠ける場合が少なくありません。一方友達との会話の中では内容がメインなので、言葉の間違いを指摘してもらったり分からない単語を聞いたりすることがしにくいことがあります。その点Language exchangeでは、基本的には友達との日常会話と同じ雰囲気ですが、その中で言葉についての質問も気兼ねなくすることができます。
 こちらに来て英語力を向上させるひとつの方法としてLanguage exchangeを紹介しました。楽しく日常会話に使える英語を習いたい、もしくは新しく言語を始めてみたい、というときに、語学学校とはまた違ったものが得られる良い方法だと思います。ここでは、それを自ら望み、探せば、できる環境はそろっています。これからManchesterに来たいと思っている、でも来てから英語を上達させる方法に不安があるという方、私はこれをひとつの選択肢としてお勧めします。トライしてみてはいかがでしょう?