分光反射率に基づいた草本植物 の光学特性に関する研究
勝野 和美 指導教官:及川武久
<研究の目的>
最近、人工衛星などによって行われているリモートセンシング は、物体の光の波長ごとの反射率、すなわち分光反射率の違いを用いて地上の状態を 観測する技術である。この技術は現在、開発が非常に進んできており、将来、従来の 方法に代わる簡単で非破壊の植生調査方法として、非常に有用なものになると思われ る。そこで本研究では、草原植生の調査におけるリモートセンシング技術の応用のた めの基礎として7種の草本植物の分光反射率を測定し、種間の比較を行った。
<研究の方法>
1.測定 1999年10月中旬より11月上旬にかけて、水理実験センター内圃場周辺に自生する草本植物7種(ヨモ ギ
Artemisia princep、セイタカアワダチソウSolidago altissima、ミツバツチグリPotentilla Freyniana、オニウシノケグサFes tuca arundinacea、アズマネザサPleioblastus chino、ススキMiscanthus sinensis、チガヤImperata cylindrica s)を根ごと採集 して比較的健康そうな葉を選んで切り取り、室内で分光反射測定を行った。測定機器 は、島津製作所の紫外可視分光光度計(UV2500PC)を用いて、それぞれの 種で30サンプルを測定した。2.データの解析 それぞれの種の平均分光反射率を特定する ために、葉の生理状態などが原因と思われる、異常なデータを除いた後、550nmの波長帯において平均値にもっとも近い値をとった10サンプルを選び、その 平均を求めてその種の標準分光反射率とした。この移動平均を求めることでノイズを 除いた後、0.5nm間隔での分光反射率の傾きから一次微分、二次微分を求 め、グラフを作成して、形を比較した。
<結果>
図1に分光反射率を示す。反射率の平均値、一次微分、二次微 分には種間差はみられなかった。
<考察>
高等植物の持つ光合成色素の種類には種によって違いがないた め、分光反射率には大きな差がみられないものと思われる。しかし、一枚一枚の葉の 分光反射率を細かくみた場合では葉の加齢などに伴った変化がみられる可能性もある 。
<今後の予定>
現在、各サンプルのデータに視点を戻し、
630nm から740nm付近に特徴的にみられる反射率の急激な上昇(レッドエッジ) の変曲点を求めている。このパラメータは葉の加齢、クロロフィル含量、ストレスな どと相関関係があるとされているので、その種間差を調べる予定。また、分光反射率 のもとデータを用いて主成分分析を行い、種間差があるかどうかも検討する。