四足動物の歩様の選択とその要因

                加賀谷美幸         指導教官:岡田守彦

[背景と目的] 

   四足動物の歩様の研究は,Muybridge(1899) が駆ける馬 の連続写真を撮影したことに

   始まり,またそれが映画を生み出すきっかけにもなって いることは興味深い.

   Muybridgeは他にも哺乳類の歩行を撮影しており,このと き霊長類のヒヒにおいて

   四肢の運び順がほかの四足哺乳動物とは逆回りになって いることを発見している.

   その後,このヒヒのパターンは観察が行われた霊長類の ほとんどに共通するものであり,

   歩行の際の四肢の運び順という点で,霊長類はほかの一 般の哺乳類と一線を画すもので

   あることがわかってきた.

   歩様の詳細な型式分類手法はHildebrandが確立してお り,歩様選択は動物の体のプロポーションや

   重心移動の安定性を主な要因としてこれまで解釈が行わ れているが,

   霊長類型と一般哺乳類型の二種の歩様型が存在すること については

   少数ながらいくつかの例外的歩様型の哺乳類の存在が観 察されていることを含めると

   十分な説明をなしえていない.

   以上を念頭におき,本研究では四足動物の歩様の特徴を 抽出し分類にあてはめることで

   それらの歩様をあらわしている動物分類群の体制の特 徴,ひいては系統的・生態的な側面の

   解剖学的要素をさぐる手がかりとする目的で,

   哺乳類,特に霊長類を主とした四足動物の歩行・走行動 作のビデオ分析を行った.

[方法]

  1. 資料映像収集 主に動物園で公開されている動物の動作を ビデオカメラで撮影して資料とした.
  2.        不足の分は放映されたテレビ番組の映像も借用 した.

  3. Gait diagram 作成 資料映像につけた1/60秒単位のタ イムコードから,各四肢の
  4.               支持期・遊脚期の継続時間を割 り出し,時間軸に対するグラフ表示を作成した.

  5. Gait graph 作成 一完歩(ストライド)に対する四肢それ ぞれの支持期の時間長や,同側前後肢間の
  6.           接地間隔のずれの時間長などの変数を算 出してGait graph を作成し,

              各事例の歩様を分類型にあてはめた.

  7. 分析・検討  歩様の一つの要素である歩調を変数として みたときの歩様,つまり歩行の際または走行

            の際に用いられる歩様や,それらの 移行期のようすを動物の分類群ごとにまとめた.

            さらに,運動面の状態,特に床状の 平面か枝状の曲面か,またその傾斜の程度

            といった要因がどう歩様に影響して いるかという視点も加えて検討した.

            また,先行研究の知見とも比較した 上で考察した.

[結果]  

   現在分析を継続中であるが,先行研究での観察例が少な くあいまいだったタマリン類の歩様選択にはっきり

   とした傾向がみられたり,場合によってはニホンザルや キツネザルでも後方交叉型(一般哺乳類型)の

   歩様をみせていたり,などいくつかの面白い観察結果が 出ており,考察につなげたいところである.


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