細胞性粘菌における性的・無性的細胞識別

                      門間まど香   指導教官:漆原秀子   <導入・目的>  細胞性粘菌Dictyostelium discoideumは、有性的・無性的生活環を持つ。有性的生活環では、 暗条件で液体培養すると、相補的な細胞を識別し、融合してマクロシストを形成する。mat a mat Aは融合するが、同じ交配型同士では融合しない。一方無性的生活環では、飢餓状態にな ると細胞が集合し、一連の形態形成過程を経て、子実体を形成する。本研究では、有性生殖にお ける識別機構が無性的発生における細胞の識別に関与するかどうかを調べる。 <方法> 1. マクロシストアッセイによる胞子塊を形成する胞子の交配型の判定  HM1:NC4=1:1で混合し、無栄養寒天培地上で発生させる。形成された子実体1つずつの胞 子塊を用いてマクロシストアッセイを行い、胞子塊中の胞子がHM1、NC4のみ、あるいは両者の 混合したもの(mix)のいずれであるかを調べた。マクロシストアッセイとは、有性生殖で相補 的細胞同士でしかマクロシストを形成しないという性質を利用して、ある未知の細胞の交配型 を判定する方法である。 2. KAX3(NC4由来の株)のGFPによる蛍光標識  HM1、NC4をNeutral RedとNile Blueで染め分けて発生させ、子実体全体での細胞の選別を調 べようとした。しかしHM1、NC4ともに、Nile Blueで染色すると発生が通常より1日遅れ、死ん でしまう細胞もあった。そこでGFPによる標識を試みた。  GFP遺伝子が挿入されたベクター pA15GFPS/TをXbaIで切断し、ベクター10μgに対して、 KAX3 4×106 cellsでエレクトロポレ−ションにより形質転換した。得られた細胞をクローニ ングし、現在は蛍光を発している細胞のスクリーニングを行っている。 <結果・考察> 1. マクロシストアッセイによる胞子塊を形成する胞子の交配型の判定  結果は表1のようになった。                 表1  表1のように、ほとんどの子実体がHM1とNC4が混合した胞子塊を持つという結果になった。し かし、NC4のみの子実体もあることから、全く識別機構が働いていないのではなく、多少識別を しており、胞子塊はほとんどがNC4であるという可能性がある。そこで、mixの子実体の交配型 の比率を現在調べている。さらに、無性的発生時における細胞認識が交配型の違いに基づいて 行われているのか、それとも単に細胞株の違いを反映しているのかという点を調べるために、 他のmat a(HM1、WS7)とmat A(NC4、WS472、 WS583)の組合わせについて同様の実験を行って いる。

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