生命倫理と中学/高校生
木塚真弓 指導教官:ダリル メイサー
[目的] 生命倫理教育ネットワークへの参加を通して、中高生の生命倫理との関わりに興味をもった。しかし、自分自身の中学高校時代を振り返っても、周りにいる中高生と話し合ってみても、生命倫理に対する関心は、あまり高いとは思えなかった。そこで、日々進歩する科学技術を将来背負うことになる中高生が、関心をもつべき生命倫理に対し、どのように接しているかを調べることにした。
[方法] この3ヵ月以内に、生命倫理、バイオテクノロジーについて、見たり聞いたり、話し合ったことがあるか、また、その内容を中学、高校に通う生徒46人に、街頭でアンケートした。その結果から更に、一日にどの位の時間を、新聞、雑誌、テレビ、ラジオに割いているかを、同様にして21人に答えてもらった。
[結果]
1 生命倫理、バイオテクノロジーについて、見たり聞いたりしたことがあるかという質問に対する結果は、次の表のようになった。
(%) |
いいえ |
新聞で |
雑誌で |
テレビで |
ラジオで |
知り合いから |
覚えていない |
生命倫理 |
34.1 |
9.8 |
4.9 |
48.8 |
0 |
9.8 |
4.9 |
バイオテクノロジー |
41.5 |
7.3 |
4.9 |
39.0 |
0 |
2.4 |
9.8 |
半分以上の人が、見たり聞いたりしたことがあると答えているが、そのほとんどがテレビによるものだった。
2.一日に新聞、雑誌、テレビ、ラジオにかける時間をたずねたところ、新聞 14分、雑誌 54分、テレビ 197分、ラジオ 17分となった。また、雑誌についてはどのようなものを読んでいるか質問すると、ファッション誌、音楽誌、マンガ雑誌、その他の娯楽情報誌が挙げられた。購読している新聞は、読売新聞 43%、朝日新聞 14%、毎日新聞 14%、その他29%と、全員が取ってはいたが、テレビ欄しか読まないという人が、74%もいた。
3.生命倫理、バイオテクノロジーについて、それぞれとの程度話し合ったととがあるかという質問に対する答えは次の表に示した。
(%) |
一度もない |
よく |
時々 |
1、2度 |
分からない |
生命倫理 |
58.5 |
4.9 |
9.8 |
22.0 |
4.9 |
バイオテクノロジー |
73.1 |
0 |
7.3 |
14.6 |
4.9 |
[考察] 中高生は、他の世代に比べ、おもな情報源としてテレビに頼っており、(一般的な調査では、新聞とテレビとにかける時間は、ほぼ等しい)2の結果より、その情報は娯楽に関するのものが多いようだ。また、雑誌は、生命倫理、バイオテクノロジーに関する情報源としてほとんど役にたっていないことが分かった。更に、メディア全般からも、これに関する情報をほとんど受けていないことは明かである。話し合ったことのない人の割合が、見たり聞いたりしたことのない人の割合に比べて高いことから、情報を得る機会の少なさが、考えたり話し合ったりする機会をより少なくしているのではないかと考えられる。逆に、話し合う機会が少ないため、メディアをより有効に利用する必要も生じないのではないだろうか。
今後、メディアを使って、うまく生命倫理などの問題を提起する方法を考る必要があるだろう。また、学校の授業でも、これらの問題について考えるきっかけを与えるべきではないだろうか。
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