交代制勤務者における血圧変動の要因



 京田 真理 指導教官:松崎 一葉 責任教官:酒井 慎吾 




 [目的]

 従来より交代制勤務が健康に及ぼす影響については様々な角度より研究がなされて来たが、近年ヘルシーワーカーエフェクトに 代表されるように、長期の交代勤務における健康に及ぼす影響への研究には、様々な問題点が存在する。今回、交代制勤務に おける血圧変動の要因を後ろ向き調査という限定されたデータをもとに、ヘルシーワーカーエフェクトの視点から検討し、 交代制勤務への適応の要因について解析することを目的とした。 [対象と方法]

 I県にある鋼管製造業(従業員321名)の事業所に勤務する女性と事務系を除いた製造業に従事する男性従業員で、交代制勤務を 行っているもの73名と交代制勤務を行わない常日勤者40名を対象に、社内健康診断の結果より収縮期および拡張期血圧、 生活習慣が大きく関与すると考えられるBMIを過去30年にわたり後ろ向きに追跡調査した。  統計解析には、SPSS6.0 for Macintoshを用いてrepeated ANOVAを行った。

[結果と考察、今後の展開] 


各図をクリックすると大きな画像が見られます。

 最終的に30年間追跡できたものは、交代制勤務者ならびに常日勤者 10名ずつであった。両者には、収縮期および拡張期血圧、BMI各々 において有意差は認められなかった(図1)。これは、近年いわれて いるヘルシーワーカーエフェクトに一致する。すると、長期にわたり 交代制勤務を継続できなかったものは、何年間位勤務に耐えられたの であろうか?
 これを交代制勤務者の血圧変動にて調べると、入社5年目前後に血圧の大きな変動を示す一群が存在した。しかし、この群が 交代勤務を脱落していくのかは健診結果からは判明しなかった。  そこで、交代制勤務に10年以上従事している群、交代制の経験10年未満の群と常日勤群の3群で、入社時から入社後 7年目までの収縮期および拡張期血圧、BMIを比較したところ、各グループ間において有意にその変動パターンが異なっていた。 交代制勤務に10年以上従事している群は、7年間の血圧はほぼ一定であり、交代制の経験10年未満の群と常日勤群では 4年目以降上昇傾向を示した(図2)。またBMIの変化率も交代制勤務に10年以上従事している群だけが、他と異なる推移を 示した(図3)。この結果より、交代制勤務を長期にわたり継続できた群と、交代制の経験10年未満の群の間には、 質的な差違が存在することが示唆された。この違いは、生活習慣・家庭環境、さらには、時間生物学的な個人の適応性に 起因するのではないかとも推測できる。しかしながら今回の研究では、十分な例数を確保できなかったため、今後さらなる詳細な 検討が必要である。

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