ヒトCD1d分子のalternative splicing

銭本 敦  指導教官:住田 孝之  責任教官:坂本 和一
【目的】 CD1d分子は非古典的MHC class泓l分子であり,class I分子とは異なりペプチドではなく 糖脂質を提示する.近年in vitroで,CD1d分子上に提示されたα-Galactosylceramide をNKT細胞が特異的に認識し増殖することが知られている.これまでに我々は種々の自己免疫 疾患患者で,NKT細胞の増殖能が健常人よりも低下している症例があることを見出した.そこ で本研究ではNKT細胞の増殖に関与する要因として,CD1d遺伝子の多型性について検討した. 【方法】 ヒト末梢血中の単核球からRNAを抽出しcDNAを合成した.これを鋳型にPCR法によりCD1d 遺伝子を増幅しサブクローニングした後,塩基配列を決定した.

【結果】
健常人の末梢血単核球には,alternative splicing
により次のisoformが存在することを明らかにした.
 (1) 全exonを有している正常型,
 (2) exon4が欠失している型, 
 (3) exon4およびexon5が欠失している型,
 (4) exon3の3’領域に133bpが欠失している型,
 (5) exon2およびexon4が欠失している型,
 (6) exon2,exon4およびexon5が欠失している型,
 (7) exon2の5’領域に35bpが欠失している型,
 (8) exon2の5’領域に35bp及び
    exon3の3’領域に133bpが欠失している型,
 (9) exon2の5’領域に55bpが欠失している型,
【考察】
アミノ酸配列の解析により以下のことが推察された.
1) isoform(2)はβ2mと結合するα3ドメインを失っ
ている.しかしβ2mを欠失した細胞上において
もわずかながらCD1d分子の発現が報告されているこ
とから,isoform(2)がβ2mに結合していない状態で
細胞膜上に発現している可能性がある.  
2) isoform(3)はβ2m結合部位及び膜貫通部位(TM)
を欠失しているが,抗原結合部位である
α1およびα2ドメインを保持していることから,分
泌型のCD1d分子として存在している可能性がある.  
3) isoform(4)(5)(6)は抗原結合部位の一部を欠いてい
ることから抗原提示能はないと考えられる.  
4) isoform(7)(8)(9)は欠失後フレームシフトを起こし,
機能的なタンパク質とならない.


【結論】
CD1d分子にはalternative splicing formが存在し,β2m非結合型CD1d分子および分泌型CD1d分子が存在す
る可能性が示された.今後,タンパク質レベルでの検討が必要とされる.


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