除草剤ピラゾレートの標的酵素の検討

960860 高部 寛子  指導教官: 松本 宏


ピラゾレートの構造式<背景と目的>
ピラゾール系除草剤に属するピラゾレート(pyrazolate)は、感受性植物に対して白化作用を示すことが知られている除草剤である。ピラゾレートを処理した植物ではカロチノイド含量の減少が見られることから、カロチノイド合成阻害剤として分類されてきた。カロチノイド合成阻害剤としてはノルフルラゾン(norflurazon)、フルリドン(fluridone)、ジフルフェニカン(diflufenican)などのフィトエンデサチュラーゼ阻害型除草剤が知られている。しかし、先行研究によって、ピラゾレートでのクロロフィルの減少やフィトエンの蓄積パターンが既存のフィトエンデサチュラーゼ阻害剤と若干異なること、および、ピラゾレートが、チロシンから各物質を経てプラストキノンやα-トコフェノールを生成する合成系の酵素、4-HPPD(4-hydroxyphenylpyruvate dioxygenase)の阻害作用を起こすことによって、間接的にフィトエンデサチュレーションを阻害することが示唆されている。一方除草剤イソキサフルトールでは分解産物のジケトニトリルが4-HPPDの阻害をすることも報告されている。本研究ではピラゾレートを用い、ピラゾレート処理による白化作用とその4-HPPD阻害への関与を検討していくことを目的とした。

<実験材料と方法>
@ タイヌビエ(Echinochloa oryzicola Vasing)およびイネ(Oryza sativa L.cv.Nipponbare )を水耕法にて生育し、第3葉期に達したものの根部をピラゾレートの所定濃度の溶液に24時間浸して吸収させることで処理を行った。その後の経過を視覚的に観察すると共に新鮮重、カロチノイド量、クロロフィル量を測定することによって影響を調べた。

A タイヌビエ(第3葉期)およびアオウキクサを用い、ピラゾレートと共に4-HPPDの産物であるHGA(homogentisate)を付与したときのピラゾレートの作用に対する影響を調べるために、その時のフィトエンの蓄積、カロチノイド量、クロロフィル量の変化についてフォトダイオードアレイ検出器を備えたHPLCを用いて解析した。

<結果と考察>
@ タイヌビエでは処理後に展開した葉において白化が見られたが、イネにおいては多少の成長阻害は見られるものの白化は起こらなかった。カロチノイドおよびクロロフィル量についてもイネにおいてはコントロールと差がなく、このことからタイヌビエは感受性であるがイネは抵抗性であることが確認できた。

A ピラゾレートと共にHGAを付与した植物体においては成長阻害が見られたが、カロチノイドおよびクロロフィル量についてはピラゾレート処理の植物体に比べて回復が見られ、またフィトエンの蓄積も解消されていた。このことから、ピラゾレートの作用点として4-HPPDが示唆された。

現在、ピラゾレートの4-HPPDへの影響を直接捉えるために、植物体もしくは植物細胞より4-HPPDの抽出を試み、in vitroでの阻害試験を行っている。


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