X連鎖リンパ増殖性症候群に対する遺伝子治療用ウイル
スベクターの作製及びプロデューサー細胞の樹立
松田法恵 指導教官 小 野寺雅史・中内啓光 責任教官 坂本和一
導入・目的:
X連鎖リンパ 増殖性症候群(XLP)はEBウイルスに感染性単核症を発症し、未感染時においても低ガン マグロブリン血症、悪性リンパ腫を呈する遺伝子疾患である。近年の分子生物学的解 析により、XLPの患者の原因遺伝子がT細胞、NK細胞の細胞内シグナル伝達に関 与すSAP(SLAM associated protein)遺伝子の異常にあることが報告され た。XLPの患者では、ヘルパーT細胞からのインターフェロンγの産生に欠陥、 EBウイ ルスに対するCTLの欠如、NK細胞のKilling 活性の欠如などが報告されてい ることからSAPはT細胞とB細胞のInteractionを介したシグナル伝達、N K細胞の活性化などに関与している可能性がありXLPの患者ではその pathwayに欠陥があることが示唆されている。XLPの遺伝子治療は、ヒトの正常な SAP遺伝 子をウイルスベクターを用いて患者血球細胞に導入することにより、EBウイルスに対するC TLの誘導、NK細胞のkilling活性の回復などを目標としてい る。我々の実験ではその基礎実験のためのウイルスベクターの作製とパッケージャー 細胞の樹立を目的としている。材料・実験方法
ウイルスベクター:使用す るレトロウイルスベクターGC
sapの特徴として、1)一般にレトロウ イルスベクターで使われるMLVのLTRのかわりに、メチル化されにくいMSCV のLTRをを用いることにより長期での発現を期待することができること。2)ウイ ルス本来のsplice donor /acceptor sequenceを保有していているので、転写効率の 良いspliced subgenomic RNAの産生が可能であること。3)GFPを選択遺伝子として持つ ので遺伝子導入細胞のFACSによる解析、収集が可能であることなどが挙げられる。パッケージャー細胞
FLYRD18:HT1080細胞由来 CATの
Envを発 現FLYA13: HT1080細胞由来
Amphotropicの Envを発 現PG13: NIH3T3細胞由来
GaLVのEnvを発現GCsap
にSAP遺伝子をクローニングする(G C sap/SAP)。このベクターを リン酸カルシウム法を用いてFLYRD18にtransfectionし、一過性に発現したリ コンビナントレトロウイルスをもちいてFLYA13及びPG13に順次感染させる。最終的に、 FACSを 用いたGFP陽性細胞の Singl Cell Sortingと、その培養上清を用いた RNA Dot Blotにより、高力価のPG13/GCsap SAP クローンを樹立する。現在の進行状況及び今後の方針:
GCsap/SAP の作製を終了。RD18に Transfection を行いGFP陽性細胞をFACSによりSortingした。現在その上清を用い てPG13,A13に感染中である。今後パッケージャー細胞が出来次第、Hela, Baf/3, 患 者T細胞株に SAP遺伝子を導入し、サザンブロット、ウエスタンブロットで SAPの mRNA,タンパク質レベルでの発現を確認する。また,SAPを導入した患者NK細胞で Killing Assayを行い活性化能力の回復が見られるかも確認する予定である。