
吉澤 円 指導教官:志賀 隆

目的:
axonin-1/SC2 (以下 axonin-1) は免疫グロブリンスーパーファミリーに属す
る細胞接着分子で、axonin-1 同士のホモフィリックな結合及び他の細胞接着分
子やプロテオグリカンとヘテロフィリックな結合をすることによって、神経突起
の伸長や神経束の形成に関与することが示されている。私たちの研究室では、ax
onin-1 が脊髄神経節の軸索に発現し、この軸索の脊髄白質・灰白質における走
行に関与することを明らかにした。本研究では、神経回路形成期の脊髄神経節の
軸索と周囲の微少環境との相互作用における axonin-1 の役割を解明するために
、免疫電子顕微鏡法を用いてこの分子の局在を更に詳しく解析することを目的とした。
実験方法:
材料として、白色レグホンの孵卵6日目と9日目の胚を用いた。
頸膨大部を含む領域を取り出し、4% パラホルムアルデヒドを含んだ 0.
1% カコジル酸干渉液に浸して、4時間室温で固定してから、マイクロスライサー
を用いて 150μm 厚の横断切片を作成した。この切片を正常ヤギ血清中で
反応させた後、一次抗体である抗 axonin-1 抗体中で 4℃、2日間反応させた。
続いて 0.1M リン酸緩衝液で 20分ずつ 3回洗浄し、二次抗体のビオチン化抗マ
ウス IgG 抗体中に浸して、室温、 4時間反応させた。これを再びリン酸緩衝液
で洗浄し、ペルオキシダーゼ結合アビジン・ビオチン複合体中で室温、2時間反
応させた。再度リン酸緩衝液で洗浄後、ジアミノベンチジン四塩酸塩 (DAB) で
反応させて染色した。そして四酸化オスミウム溶液で後固定をしてからエポン樹
脂に包埋した。包埋したブロックを超薄切片にし、ホルムバール膜を張った単孔
メッシュにのせてから酢酸ウランとクエン酸鉛を使って電子染色した。これを電
子顕微鏡で観察した。
結果と考察:
孵卵6日の脊髄神経節の軸索(一次求心性線維)は既に脊髄内に侵入し、神経束を形成しながら後索を前後方向に走行している。この時期では、脊髄神経節細胞の細胞体、軸索および成長円錐の細胞膜に axonin-1 の発現が認められた(右図)。特に、後索内で神経束を形成しているほとんど全ての軸索や成長円錐で axonin-1 が強く発現していた。一方、これらの神経束の間を放射状に伸びる突起やその突起の脊髄表面直下での終足では、axonin-1 を発現する軸索や成長円錐と接触する部位でのみ axonin-1 の弱い発現が見られた。従って、放射状突起では axonin-1 の発現が局所的に調節されていることが明らかになった。以上のように、お互いに接触する軸索、成長円錐、放射状突起に axonin-1 の発現が見られたことは、この分子が神経束の形成や軸索伸長におけるコンタクトガイダンスに関与する可能性が示唆された
図の説明:
孵卵6日のニワトリ胚脊髄後索。神経束を形成する軸索と、成長円錐 (GC) の細胞膜が全て axonin-1 陽性になっている。

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