昆虫の嗅覚系1次 中枢の構造と匂い応答特性の関係
蘇 克敬(
Soo KaJin) 指導教官:神崎亮平背景:
昆虫は匂いでコミュニケーションする動物としても有名である。その中でも フェロモンは定型行動をひき起こす鍵刺激である場合がしばしばある。昆虫は触角で 匂い物質を受容し、生体内の電気信号に変換するが、匂いの種類やその濃度等の情報 まで変換されるとされている。それによって、匂いの種類が識別されている。タバコ スズメガ(Manduca sexta)ではその処理の回路もある程度解明された。カイコガ(Bombyx mori)もフェロモンによっ て匂い源探索行動が引き起こされることから匂いの識別が行われている。カイコガの 嗅覚系1次中枢(触角葉)内に存在する糸球体は触角葉内神経間がシナプスを形成す る場所であって、匂い情報の変換と処理で匂い識別の機能的な意味も持つとされる、
目的:
カイコガの触角葉を
3次元に観察と同定した。これにより、記録した嗅覚系第一次 中枢内の神経を異なる個体間にでも比較出来た。触角葉内の神経の電気生理学的な匂 い応答特性と3次元の形 態を記録し、匂い識別の機構を調べた。方法:
電気生理の手法として古くから知られている細胞内記録 と染色法を用いて、触角葉内の神経の匂いに対する応答特性とその形態を調べた。微 小ガラス電極に電荷を持つルシファーイエローという蛍光色素を詰め、神経に挿入し 、匂い刺激に対する膜電位を変化を記録した。そして,記録後に,電極に電圧をかけ ることで電気泳動的に蛍光色素を細胞内に注入した。固定と透徹の作業の後に共焦点 レーザー型スキャン顕微鏡を使って、神経の三次元形態を調べた。同時に、神経の存 在する触角葉の内部構造(糸球体構造)も記録して調べて同定した。
結果と考察:
雄カイコガに特有の触角葉の内部構造(大糸球体)内で<
/FONT>5~7の内部構造(コンパ
ートメント)が観測出来た。そして、細胞内記録と染色法で記録した大糸球体内の神
経は、各々の樹状突起の大糸球体に於ける空間的な分布に違い、匂いに対する反応特
性も異なる結果が得られた、これによって大糸球体内のコンパートメントに機能的な
意味を持つ可能性を示した。
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