枯草菌DEADボックス型RNAヘリカーゼ相 同遺伝子の機能解析
吉野桂子 指導教官:中村幸治 責任教官:山根國男
<目的>
DEADボックス型RNAヘリカーゼは、RNA分子の構造変化を引き起こす因子で、翻訳開 始やRNAスプライ
シングなどのRNAが関与する様々な生体内機構において重要な働きを 持つことが知られている。その機能に
ついては、主に酵母などの真核生物で解析が進 められているが、原核生物においては報告例が少なく、機能
も未知なものが多い。そ こで、原核生物におけるDEADボックス型RNAヘリカーゼの機能を明らかにするこ
とを 目的として、ゲノムの全塩基配列が決定されている枯草菌を用いて、DEADボックス型 RNAヘリカーゼ
相同遺伝子を検索し、機能解析を行った。
<方法>
最初に報告されたDEADボックス型RNAヘリカーゼであるマウスのeIF-4A(e ukaryotic
initiation factor-4A)のアミノ酸配列を用いて、枯草菌全ORFに対するホモ ロジー検索を行っ
た結果、DEADボックス型RNAヘリカーゼファミリーに保存されてい る8つのモチーフを持つ5つの
ORF(yxiN, ydbR, yfmL, yqfR, yprA ;)が見い出された。これら、5種類のORFについて、(1)発現洋式、
及び、(2)ATPase 活性について解析を行った。
【1】発現パターンの解析
各遺伝子の発現パターンを調べるために、胞子形成培地(2xSG)で培養した枯草菌野 生株(168trpC2)から全
RNAを抽出し、それぞれの遺伝子のN-末端側約300bpをプローブ に用いたノーザン解析を行った。
【2】各タンパク質のATPase活性におけるRNA依存性の検討
DEADボックス型RNAヘリカーゼの多くは、RNA存在下においてATPase活性の上昇を示 すことが知られて
いる。そこで、枯草菌の各タンパク質について、同様の特性を示す かどうか調べるために、まず、6xHis-タ
グを付加した各タンパク質を、大腸菌を用い て大量調製した。次に、これらのタンパク質を、枯草菌の全
RNAの存在下及び非存在 下において、[γ-32P]ATPと混合し、遊離したリン酸(Pi)を 液体シン
チレーションカウントにより測定した。
<結果・今後の展望>
【1】ノーザン解析の結果、各相同遺伝子はいずれも栄養増殖期において発現してい た。また、yqfR,
yfmL, yprAはオペロンを形成していると考え られた。
【2】各タンパク質のATPase活性を測定した結果、全てのタンパク質はATPase活性を 示した。さらに、
YdbR, YfmLは、RNAに依存したATPase活性の上昇を示した。