末梢神経障害関連遺伝子・Kenae 欠損マウスの作製の試み
矢野 武明(960885) 指導責任教官 八神 健 一
<導入と目的>
自己免疫的機序により末梢神経障害を呈する患者血清より、自 己抗原として「しびれ」の意味を持つKenaeが同定された。しかし、実際にど の様にKenaeが機能しているのかはわかっていない。本遺伝子の個体レベルで の解析のためのKOマウスの作製を試みている。そこで、マウスの肝臓由来のゲノムラ イブラリをもちいてヒトKenae cDNAをプローブとしたハイブリダイゼーショ ンクローニングを行った。その結果、9個のポジティブクローンが得られた。その後 、遺伝子欠損マウスの作製に適したクローンを選別するために、サザンハイブリダイ ゼーションを行ったところ、First Methionine を有する3個のクローンが得られた。 また、ヒトcDNAを用いてスクリーニングを行い、マウスKenaeのcDNAも得られ た。私は、この3個のゲノムクローンとマウスKenae cDNAを用いて遺伝子欠損 マウス作製のためのターゲティングベクターの構築を行った。
<方法>
ゲノムのポジティブクローン3個のうち、どのクローンがターゲ ティングベクターの構築に適しているかを、ヒトKenae cDNAを3分割して作 ったプローブを用いてサザンハイブリダイゼーション法で検討した。ラベルにはα32 Pを使用した。ゲノムを制限酵素処理とシークエンスを用いて制限酵素地図を作製し た。この制限酵素地図をもとにターゲティングベクターの構築を行った。
<結果と考察>
ヒトKenae cDNAを3分割したプローブを用いてサザンハ イブリダイゼーションを行ったところ、3個のクローンのうち2個がターゲティングベ クターの構築に適していることが分かった。この2個のクローンは互いにほぼ同じ領 域をもつクローンだった。このクローンを制限酵素処理とシークエンスを用いて制限 酵素地図を作製し、それを元にターゲティングベクターの設計を行った。遺伝子欠損 マウス作製後、個体内での発現を調べるためにゲノムのメチオニンをLacZで置き換え 、遺伝子組み替え後の選別のためにNeoとDT-Aを導入するように設計した。現在この ターゲティングベクターを設計に従って作成中である。今後、作製したターゲティン グベクターを用いて遺伝子欠損マウスを作成し、Kenaeの生体内における発現 や、どのような生理機能をもっているのかを解析する予定である。