アカイロマメゾウムシに見られる共倒れ型競争様式の実験的研究

真野浩行  指導教官 藤井宏一

目的と背景

生物は必要な資源をめぐり競争を行う。同一種内の競争 (種内競争)の競争を理解する上で、2つの競争様式が考えられてきた。これ は勝ち抜き型競争と共倒れ型競争様式という2つの競争様式である。勝ち抜き 型競争は、一部の個体により資源が独占される競争様式であり、一方の共倒 れ型競争様式は、競争に参加する個体間で、資源を分割する競争様式である。 競争様式は主に競争曲線と資源の分配パターンによって分類される。また競 争様式は個体間の相互作用の点から、干渉型競争と消費型競争という2つの競 争様式に分類される。干渉型競争とは、競争相手の資源利用を、直接的また は間接的に行動によって制限する競争様式である。また消費型競争は個体ご との資源獲得能力に応じた競争をさす。

マメゾウムシ類は、幼虫期間中に勝ち抜き型または共倒れ型競争様式を示 す生物である。過去に直接的な干渉の有無により、マメゾウムシ類の競争様 式の分類がおこなわれた。しかしマメゾウムシ類の競争様式について、すべ てをうまく説明することできなかった。本実験では、マメゾウムシの1種であ るアカイロマメゾウムシ Callosobruchus analisの2系統(burA,eA) を用いた。アカイロマメゾウムシは初期幼虫密度に関わらず羽化成虫数が一 定であるため、勝ち抜き型競争を行う生物とされてきた。しかし、系統burA は初期幼虫密度に対して、羽化成虫数が増加する傾向がみられた。そのため 競争曲線の点で、系統burAは共倒れ型に近い競争様式をとるようにみえる。 まずはじめに、この2系統の競争様式を競争曲線と資源の分配パターンの点か ら調べた。次に、鞘翅の長さと産卵数を指標にして、系統間の体サイズを比 較した。体サイズの違いに基づく遭遇率の違いから、系統間の競争様式の違 いを考察した。

実験方法

各系統について、初期幼虫密度を1匹と2匹にした小豆を それぞれ50個用意した。それぞれについて、羽化成虫数と発育日数、性別を 記録して、競争曲線を調べた。また各系統の各初期幼虫密度から羽化してき た成虫の鞘翅の長さを雄雌各20個体ずつ調べて、これを資源の分配パターン の指標とした。2系統間の体サイズを雌の鞘翅の長さと産卵数を指標に比較 した。また系統間の発育日数も比較した。

結果と考察

羽化成虫数による競争曲線は、2系統ともに勝ち抜き型 競争曲線を示す飽和型の曲線が得られた。系統burAの初期幼虫密度が2匹の 場合に、成虫が2匹羽化する割合は系統eAよりも高い値を示した。また鞘翅 の長さは両系統とも初期幼虫密度に関わらず、値は変わらなかった。鞘翅の 長さと産卵数の系統間比較において、それぞれ有為な差が見られた。系統eA は系統burAよりも両指標において、大きな値を示した。羽化成虫数の点から、 系統burAは系統eAよりも共倒れ型よりの競争を行う。これは系統burAの体サ イズが系統eAより小さいために、豆内部での系統burAにおける幼虫同士の遭 遇率が低いことが原因と示唆される。