つくば生物ジャーナル Tsukuba Journal of Biology (2003) 2: TJB200312YK.

特集:下田臨海実験センター設立70周年記念

北原保雄学長 挨拶(抜粋)

北原 保雄(筑波大学 学長)

 本日お集りいただきました皆様を始め、関係者方々の御尽力によりまして、本センターは設立70周年を迎えることになりました。振り返りますと、今から71年前の1932年(昭和7年)、当時の下田町より敷地(約 18,200m2)の御寄付をいただきまして、翌1933年6月に水族館、研究棟、寄宿舎等の洋風の建物が完成し、東京文理科大学附属臨海実験所という名前で発足したのが、本センターの始まりでした。第2次大戦後間もない1949年に東京教育大学理学部附属臨海実験所と改称され、1976年に筑波大学の学内共同利用施設に改組され、現在の下田臨海実験センターとなりました。この間、大型の研究調査船「つくば」の運用を含め、逐次、施設設備の近代化と拡充を図ると共に、豊かな生物資源を有する伊豆半島南部の地の利を活かして、海洋生物と海洋環境に関する教育と研究の発展に重要な役割を果してまいりました。

 社会に開かれた大学という本学の基本理念のもとに、大学生や大学院生対象の公開臨海実習、現職教育者や高校生対象の公開講座を開催するなどで、本センター施設を社会に広く活用していただく取り組みもしてきました。その結果、利用者が年間延べ6―7千人という数に上りました。

北原保夫学長の挨拶と会場の風景

 現在、国会では国立大学の法人化法案が審議されておりますが、本学としても、法人化に向けて準備を鋭意進めると共に、常に改革を進める大学として、社会の発展により貢献できる体制を整え、研究と教育の質を高めて行きたいと思っております。この観点から、下田臨海実験センターが社会の発展にどのよう関わって行くべきか、私の考えをいささか述べてみたいと存じます。

 20世紀は自然環境の破壊と引き換えに、飛躍的な経済発展をなし遂げてきた世紀でありました。新しい21世紀は、それによって生じた様々な問題を解決しつつ、持続的な成長を遂げるために新たな知恵やシステムが求められる世紀であると考えております。とりわけ、生物・生命・環境というような分野の重要性は一層高まるものと思われます。筑波大学の生物学研究は国際的にも高い評価を得ております。下田臨海実験センターは首都圏から交通至便な場所にあります。そして、多種多様な生物類が生息しており、海洋生物・海洋環境に関する教育と研究の最適なフィールドであります。本学は、今後も、この恵まれた場を最大限に活用し、生物・生命・環境科学の発展に貢献して行かねばなりません。設立70周年を迎えた本センターは、教育と研究の両面において、その期待に十分応えられるだけの力を有していると確信いたしております。

 本日お集りの皆様方におかれましては、引き続き御支援のほど宜しくお願いいたします。併せて、下田市、静岡県水産試験場、下田市漁業組合を始め、関係諸団体機関の益々の御繁栄を祈念申し上げまして、私の御挨拶とさせていただきます。本日は、どうも有難うございました。

左から:藏本センター長、石井下田市長、山本伊豆分場長、佐々木魚業組合長

Contributed by Taketeru Kuramoto, Received October 21, 2003, Revised version received October 28, 2003.

©2003 筑波大学生物学類