つくば生物ジャーナル Tsukuba Journal of Biology (2003) 2, 42     (C) 2003 筑波大学生物学類

ノシメマダラメイガPlodia interpunctella(Hübner)の産卵誘引と産卵刺激物質の研究

上地 邦明 (筑波大学 生物学類 4年)  指導教官:鈴木 隆久 (筑波大学 応用生物化学系)


【背景と目的】

ノシメマダラメイガPlodia interpunctella (Hübner)は鱗翅目(Lepidoptera)、メイガ科(Pyralidae)に属し、成虫は開張13-16 o程度で、翅を屋根型にたたんで静止する。また上から見たとき、前額部が円錐状に突出していることと、下唇鬚が前向きに出ているのが特徴である。穀物、豆類、乾燥果実、野菜、小麦粉などの穀紛、第二次加工品の菓子類など、きわめて広い食性を持ち、貯穀害虫としてきわめて重大な害虫として知られている。被害を与えるのは幼虫期のみであるが、この蛾の成虫を誘引する物質を特定することにより、それをトラップに使いこの害虫の防除に利用できる。また穀物の近くに産卵することからその揮発性物質中に産卵刺激物質の存在が推定される。この研究の目的はノシメマダラメイガの産卵誘引物質と産卵刺激物質を同定する事である。

【方法】

供試虫:ノシメマダラメイガPlodia interpunctella (Hübner)

抽出方法:全粒小麦粉を5倍量のアセトンで24時間抽出し、それを減圧下で濃縮した後、一部をとって生物試験した。

1.産卵誘引物質の生物試験法:シャーレ(直径15 cm)に穴(直径3 cm)を7 cm離して対称的に2つあけ、それぞれに高さ4 cmの円筒を設置し、円筒の底にそれぞれ粗抽出物もしくは溶媒だけの対照を濾紙に塗布したものを置いた。シャーレには2日齢の交尾済み雌を5頭入れた。暗期において全暗下90分放置し、各穴に誘引された個体数を数えた。試験は5反復行い、活性の有無は対応のあるt検定を用いて危険率が5%以下のとき活性ありとした。

2.産卵刺激物質の生物試験法:5 cmのシャーレのふたの部分を二つ重ね合わせ、その間に濾紙を挟み下部に全粒小麦粉もしくは抽出物を塗布した濾紙をおき、上部には2日齢の交尾済み雌1頭を入れ、その産卵数を調べた。対照として、空もしくは溶媒のみを塗布した濾紙を入れた。生物試験は全暗下で24時間行い、試料、対照それぞれ20反復行った。活性の有無はMann-WhitneyU--検定法を用いて、危険率が5%以下のとき活性ありとした。

【結果と考察】

予備試験においてヘキサン、エーテル、アセトンの溶媒で抽出を行った所、アセトン抽出物に一番強い活性が認められた。そこでアセトンで再度抽出を行った所、産卵誘引物質の生物試験では粗抽出物1 mg当量で活性が認められた。産卵刺激物質の生物試験では全粒小麦粉1 gで活性が認められ、粗抽出物では1 g当量で活性が認められた。

【今後の予定】

粗抽出物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分画し生物試験を行う。また、吸着剤Porapack Qを用いて全粒小麦粉の揮発性成分を捕集して誘引性を調べる予定。