つくば生物ジャーナル Tsukuba Journal of Biology (2003) 2, 77     (C) 2003 筑波大学生物学類

グラム陰性細菌におけるニトリル代謝関連遺伝子の解析

保坂 英明 (筑波大学 生物学類 4年)  指導教官:小林 達彦 (筑波大学 応用生物化学系)


 

【導入・目的】本研究室では従来よりグラム陰性細菌におけるニトリル代謝を研究している。このニトリル代謝に関与する遺伝子クラスターを解析したところ、さらに下流に新たな機能未知なオープンリーディングフレーム(ORF)を見い出した。遺伝子配列を相同性検索にかけてみたところ、この遺伝子産物はニトリル代謝において重要な働きをする酵素と予想された。

 そこで本ORFを大腸菌で発現させ、酵素活性を測定することで、新たなニトリル代謝を明らかにするとともに、本酵素の酵素化学的、物理化学的諸性質や反応機構などを解析することを目的として本研究を行った。

 

【方法・結果】このORFを保持するプラスミドを鋳型として目的遺伝子に対して設計したプライマーを用いてPCR反応を行い、目的遺伝子部分の増幅を行った。こうして増幅した断片をpUCなどのlacプロモーターを有する大腸菌用ベクターにつなぎ目的遺伝子が導入された発現プラスミドを構築した。その後、条件検討を行い、目的タンパクの発現を試みた。宿主大腸菌、誘導物質濃度、培養温度などを様々に変えた条件で12時間培養後、SDS-PAGEにより目的タンパク質の発現を検討したところ、目的の分子量の位置に顕著に誘導されるバンドは確認できなかった。

 次にORFを発現させるベクターをT7プロモーターを有する大腸菌用ベクターに変更し、発現プラスミドを構築した。現在、条件検討を行いSDS-PAGEにより発現の確認を行っている。