つくば生物ジャーナル Tsukuba Journal of Biology (2004) 3, 22-23   (C)2004 筑波大学生物学類

代 謝 生 理 化 学 I     Metabolism and Physiological Chemistry I

科目番号: G11 1011  
単位数: 2単位
標準履修年次: 2・3年
実施学期 曜時限: 第1・2学期 水曜日 1時限
担当教官: 白岩 善博


第1学期(担当教官: 白岩 善博)

授業概要:
 本講義は,第1学期と第2学期にわたる講義であり,各々に特徴を持たせながらも,統一のとれた講義とする。第1学期においては,植物の基本的特徴である光合成の機能,物質代謝およびそのメカニズムについて詳細に論ずる。光合成に関しては,小学校以来,生物の授業で必ず取り上げられているために,既に確立された学問分野と思われがちである。しかし,現在でも新たな特徴をもつ光合成生物が発見されたり,光合成機能の遺伝的転換により新たな環境耐性を有する植物の開発が試みられるなど非常にアクテイブな学問分野である。本講義では, 光エネルギーの獲得およびCO2固定および炭素代謝に焦点を合わせ,種々の反応のしくみとその生理学的意義について解説する。

授業内容:
(1)光合成生物とは?−光合成器官の構造と分子構築(しくみの多様性)
(2)光合成系の進化(35億年にわたる生存戦略)
(3)光化学系と電子伝達系-1:光合成色素系(植物の色の役割)
(4)光化学系と電子伝達系-2:H2Oの分解と酸素発生系(水を使うことの長所と短所)
(5)CO2固定系の基本的機構(光合成の基本的な回路や代謝経路)
(6)C3経路の代謝調節(C3植物とは?その長所と短所)
(7)C4経路の機構と調節(C4植物とは?その優位性と劣性)
(8)CAM代謝(砂漠植物の優れた知恵)
(9)光呼吸とC2経路およびその生理学的意義(酸素固定と地球上で生きのびるための巧妙なしくみ)
(10)期 末 試 験

前提科目・履修上の注意事項: 「生化学概論」。

単位取得条件,成績評価基準: 6割以上の出席と期末試験(論述筆記)の成績。

指定教科書:
「植物生化学」H.-W. Heldt著,金井龍二訳,シュプリンガーフェアラーク 東京,2000年。

参考書・文献:
1)生物工学基礎コース「植物生理工学」宮地・大森編,丸善,1998年。
2)ストライヤー「生化学」第4版,入江達郎ら訳,東京化学同人,2000年。

オフィス・アワー:
月曜日(17-18時)。生物農林学系F棟501(Tel. 853-4668),E-mail: emilhux@biol.tsukuba.ac.jp

備考(受講学生に望むこと):
積極的な発言と(質問)と授業評価への参加。


第2学期(担当教官: 白岩 善博)

授業概要:
 1学期で解説した光合成および呼吸関連の代謝に連なる種々の一次代謝系の構成およびその調節機構について解説する。炭素代謝,窒素代謝および硫黄代謝に関してさらに詳細に解説すると共に,それら代謝系の地球環境変動との関わり合いについても述べる。さらに,二次代謝についてもふれる。 1〜2学期を通して,エネルギーおよび物質代謝系について,総合的に理解し,それらの生理学的意義や地球環境の変遷との関わり合いについても深く理解し,物質代謝研究の重要性と意義について考える機会を提供する。

授業内容:
(1)地球環境の変遷とCO2濃縮機構(光合成には低すぎる大気中CO2の有効利用法は?)
(2)環境変動に対する代謝調節と環境応答のメカニズム(順化と適応)
(3)細菌の光合成I-エネルギー代謝-(酸素を出さない光合成のしくみ)
(4)細菌の光合成II-CO2固定および物質代謝-(原核生物における物質代謝)
(5)窒素固定反応,窒素代謝およびその調節機構(炭素だけでは始まらない!)
(6)硫黄代謝と硫黄サイクル(硫黄も大切!やっと分かってきた硫黄サイクル)
(7)特徴的な二次代謝経路-産物とその生合成系-(いろいろ作って身を立て守る-代謝産物の役割-)
(8)微細藻類の代謝と地球環境 I(サンゴ礁における物質代謝と物質循環)
(9)微細藻類の代謝と地球環境 II(ミクロの世界から地球環境の未来を考える)
(10)期 末 試 験

前提科目・履修上の注意事項: 「生化学概論 」。

単位取得条件,成績評価基準: 6割以上の出席と期末試験(論述筆記)の成績。

指定教科書:
「植物生化学」H.-W. Heldt著,金井龍二訳,シュプリンガーフェアラーク東京,2000年。

参考書・文献:
1)生物工学基礎コース「植物生理工学」宮地・大森編,丸善,1998年。
2)ストライヤー「生化学」第4版,入江達郎ら訳,東京化学同人,2000年。

オフィス・アワー:
月曜日(17-18時)。生物農林学系F棟501(Tel. 853-4668),E-mail: emilhux@biol.tsukuba.ac.jp

備考(受講学生に望むこと):
積極的な自習,科学雑誌での関連情報の収集,授業評価への参加。