つくば生物ジャーナル Tsukuba Journal of Biology (2005) 4 TJB2005G230801
化 学 生 態 学 Chemical Ecology
科目番号: G23 0801 単位数: 2単位 標準履修年次: 2・3年 実施学期 曜時限: 第2・3学期 月曜日 1時限 担当教員: 鈴木 隆久
第2学期(担当教員: 鈴木 隆久)
授業概要: 地球の物理的環境と生物的環境に適応した生物だけが地球上に存在し、繁栄している。従来、化学的な因子の存在が想定されながら、研究不可能とされて来た生物相互間の干渉に関わる化学物質や生物に関わる無生物的因子が、近年になって有機化学的分析手段の飛躍的な発展から、化学的に理解できるようになって来た。この知識は1968年にニューヨーク州立大学シラキュース校の林学科で化学生態学(ChemicalEcology)という名称で講義され,その内容が1969年出版公表された。また、Simeoneらによって1975年“Journal
of Chemical Ecology"
がこの分野の専門誌として創刊された。食植性昆虫はすべての植物を寄主とするわけではなく、ある特定の植物(群)のみを化学物質を手がかりとして食物又は産卵のために寄主選択している。植物の花の色、密、香りは受粉媒介性昆虫との共進化の結果を反映している。講義では環境と植物、動物と植物、下等植物と高等植物、高等植物と高等植物、同種の動物間、異種の動物間などで機能する化学物質群の概念と作用化合物について解説するが、2学期講義ではこのうち、植物と環境、動物と植物の相互作用を中心に解説する。
授業内容:
(1) 情報化学物質の分類、環境に対する植物の生化学的適応 (2) 受粉の生化学(花の色、色素、香り)
(3) 植物の持つ有毒物質、昆虫に対する摂食阻害物質(植物の生体防御物質) (4) 〃
(5) 植物の有する昆虫ホルモン系攪乱物質(脱皮ホルモン、幼若ホルモン関連物質など(植物の生体防御物質) (6) 〃
(7) 昆虫の寄主選択(食物選択)に関与する化学物質 (8) 〃 (産卵選択) 〃
(9) 植物の有毒物質に対する昆虫の対抗適応 (10) その他の動物・植物相互作用物質(Glycinoeclepin A,
殺線虫物質など)
前提科目・履修上の注意事項: 有機化学を履修していることが望ましい。
単位取得条件、成績評価基準: 出席状況と期末試験の結果を考慮して評価する。
指定教科書: プリントを配布する。
参考書・文献: 1)
ハルボーン化学生態学(高橋英一。深海 浩訳)、文永堂 2) 生物達の不思議な物語(深海 浩著)、化学同人 3)
昆虫の寄主植物(平野千里著)、共立出版 4) 植物の生理活性物質(山下恭平著)、南江堂 5) 生物間の化学交渉(古前 恒・林 七雄著)、三共出版
6) 天然の毒(山崎幹夫他著)、講談社 7) 昆虫行動の化学(石井象二郎他3名著)、倍風館 8)
昆虫の行動(高橋正三著)、化学同人
オフィス・アワー: 火・木15 〜18時まで; 場所 生農棟 B114 (Tel
6629) e-mail address:
tksuzuki@agbi.tsukuba.ac.jp
備考(受講学生に望むこと):
第3学期(担当教員: 鈴木 隆久)
授業概要: 化学生態学の成果の一部である昆虫の性フェロモン研究は非常に進展し、鱗翅目(ガの仲間)だけで現在約300種の性フェロモンが構造決定されている。この性フェロモンを利用した害虫防除は農薬を使わない地球に優しい防除法と目され、現在、実用化され始めている。また、集合フェロモン、警報フェロモン、道しるべフェロモンなども続々単離同定されている。3学期の講義では同種動物間で機能するフェロモン類を中心に、異種動物間で作用する防御物質(アロモン)、カイロモンやシノモン、高等植物間、高等植物と下等植物間などで機能する化合物群について解説し、その応用に付いても言及する。
授業内容:
(1) 動物のフェロモン(性フェロモン) (2) 〃 (害虫防除への応用)
(3) 〃 (集合、警報、道しるべフェロモンなど) (4) 防御物質(アロモン)、カイロモン及びシノモン
(5) 〃 (6) 高等植物のアレロパシー(他感作用) (7) 〃 (8) ファイトアレキシン(植物の対病原菌抵抗性物質) (9) エンドファイト(植物内共生菌;家畜、昆虫に有毒な物質を生産)
(10) 海洋生物の化学生態学
前提科目・履修上の注意事項: 有機化学を履修していることが望ましい。
単位取得条件、成績評価基準: 出席状況と期末試験の結果を考慮して評価する。
指定教科書: プリントを配布する。
参考書・文献: 1)
昆虫のフェロモン(湯嶋 健著)、文永堂 2) フェロモン(鈴木健二著)、三共出版 3) 昆虫の生理活性物質(石井象二郎著)、南江堂 4)
フェロモンの謎(W.C.Agosta 著、木村武二訳)、東京化学同人 5) アレロパシー(E.L.Rice 著、八巻・安田・藤井訳)、学会出版センター
6) 昆虫の行動(高橋正三著)、化学同人 7) 生物の生活と生理活性物質(日本農芸化学会編)、朝倉書店 8)
ハルボーン化学生態学(高橋英一・深海 浩訳)、文永堂 9) 毒虫の話(梅谷献二・安宮和夫著)、北隆館
10)海洋生物のケミカルシグナル(北川 薫・伏谷伸宏編)、講談社 11)アレロパシー(藤井義晴著)、農山漁村文化協会
オフィス・アワー: 火・木
15時から 18時まで; 場所 生農棟 B114 (Tel 6629) e-mail address:
tksuzuki@agbi.tsukuba.ac.jp
備考(受講学生に望むこと):
©2005 筑波大学生物学類 |