つくば生物ジャーナル Tsukuba Journal of Biology (2005) 4: TJB200503MK.

特集:卒業

Bon Voyage!

小林 達彦(筑波大学 生命環境科学研究科)

 皆さん、ご卒業、おめでとうございます。

 私の場合は、早いもので今年、丁度、卒業20年になり、この2月に同窓会を行いました。当時の担任の先生も交え、久しぶりに会うクラスメートとの話は楽しく、あっという間の3時間でした。大いに遊び、カヌーをやり、その後は、研究三昧の学生時代が懐かしく思い出され、1ヶ月も経っていない今また、普段は思い起こさない学生時代の色々なことが頭をよぎりながら、この文章を書いています。

 皆さんは4年前に入学され、と同時に、私は赴任1年半目に3クラの担任を仰せつかりました。多感な青春真っ只中の3クラの皆さんを見ていると、大学での「教育」の重要性を思わずにはいきませんでしたが、昨年までの同ジャーナルの卒業特集にも何人かの先生方が書いておられるように、大学生に対してもホームルーム的要素の強い担任制度を行うことには私も疑問を持ちました。自分が学生時代はこのような過保護的な制度は無く、ある意味、突き放された状態・野放し状態におかれ、そこで自らが考え経験しながら、自分の道を少しづつ探していた感がします。色々なことが自動的に与えられるのではなく、いわゆる「捨て育ち」状態で模索してきたこともしばしばであり、そのような状況の中、最初はぺいぺいであった自分が少しづつしぶとくなってくるようになりました。振り返れば、学生時代、印度に一人旅した際、「自分がここで放り出された場合、果たして一人で生きていけるのか」と自問し、「自分にはこれと言って生きるすべなどないのではないか、学生時代にしっかり学び色々な経験を積み、何か自分にでもできそうな仕事で身を立てるしかないのではないか」と実感したのは大きなことでした。

 長い人類の歴史の中で、深淵なる宇宙のこの広い地球の中の「筑波」の地で、皆さんと知り合えたのは何かの「縁」で、まさに一期一会であり、この「縁」はこれからも大事にしたいと思っています。皆さんは授業等で教えられ(かつ学び)また、多くのことを自らが経験したことと思います。今春卒業してすぐに就職する方はもちろん、大学院に進学する方もいずれは筑波大学を離れるのがほとんどであり、これから外の世界に出て行くことになりますが、皆さんのOriginは筑波であり、(もちろん過剰な自信は禁物ですが)自信を持って、そして誇りを持って、社会で活躍されることを祈っています。

 「卒業」は「終える」ニュアンスのある言葉ですが、一方で「始まり」でもあります。「卒業式」は英和辞典を見ると、よく最初にgraduation ceremonyと出ていますが、アメリカの大学での「卒業式」はCommencementといいます。Commenceは「始まり」を意味し、文字通り、皆さんにとっては卒業式が新たなスタートの時です。この4年間で一回りも二回りも大きくなったのは間違いない事実であり、これから置かれることになるであろう競争環境下で、今までの経験を基に、皆さんの個性が輝かんことを祈っています。

 そして、最後ではありますが、最も言いたいこと、「健康に気をつけて!」

 

Contributed by Michihiko Kobayashi, Received April 4, 2005.

©2005 筑波大学生物学類