つくば生物ジャーナル Tsukuba Journal of Biology (2005) 4: TJB200503RY.

特集:卒業

卒業直前のある学生の日記

山田理紗(生物学類 4年生)

2005年 2月25日
 卒業までちょうど1ヶ月となった。なぜだか卒業という実感が沸いてこない…。初めての大学生活と一人暮らしを経験した1年、部活に入部して空手漬けの生活を送った2年、マンチェスターへ留学した3年、そして帰国し、研究室生活を送った4年。確かにいろいろなことがあったはずなのに、この4年間があっという間に過ぎてしまって、本当に4年が経ったのかどうか疑ってしまうほどだ。いろいろと悩んだり、苦しんだりもした4年間だったけれど、それも含めて今思い返すと楽しい4年間だった。「楽しい」という言葉にすると何か少し軽い感じがしてしまうが、決して安っぽい楽しさではなかった。言葉ではうまく形容し難い、奥の深い充実感を伴った楽しさだった。このように思えるのはきっと、この4年間の大学生活に満足しているからだろう。

2005年 3月3日
 4年になり、授業を受けなくなってめっきり友達に会う機会が減った。1,2年のころは毎日のように友達と顔を合わせていたが、最近は一部の限られた友達を除いて会うことがなくなってしまった。そんな中、今日偶然にある友達と会った。とても懐かしくついつい長話をしてしまった。2年前は毎日のように教室で顔を合わせて、会うのが当然のように感じていたから友達と会うことに特別なことは感じていなかったが、今日は久々に言葉を交わすことが楽しくてたまらなかった。卒業後も筑波に残り大学院に進学する人がほとんどだとはいえ、卒業後は就職、他大学の大学院への進学などでなかなか会えなくなってしまう友達もいる。そう思うと妙に切なく感じる。卒業を目の前にして、友達というものを再認識するなんて何か皮肉な感じもするが、きっと卒業目前だから感じることの出来た友達の大切さなのだろう。

2005年 3月14日
 久しぶりにマンチェスターで出会った友達からメールが来た。いろいろマンチェスターでの出来事が思い出されて懐かしかった。マンチェスターでの生活は今となっては夢であったかのように感じる。今の生活とあまりにも違うからか、たった1年前のことなのにすごく遠い出来事のように感じる。それだけこの留学で得たものが、日本ではすることのできない貴重な経験ばかりであったといえるのかもしれない。この留学で何を学んできたのかと聞かれても、いろいろありすぎてうまく言えない。いや、むしろ中身が抽象的で、漠然としていて自分でもよくわかっていないのかもしれない。ただ確実なのは、留学後の自分は留学前の自分とは明らかに変わっているということだ。この変化は大学1,2年の間の変化とはまた違う変化のように思う。そう考えると、この留学はこの4年間の中で一番私を成長させたイベントだったかもしれない。4年間の出来事を思い返してみても、やはりこの留学が一番印象深い。4年という短い大学生活の中で、このような留学が出来たということは本当に貴重な経験だったと思う。

2005年 3月20日
ここ数日卒業前のイベントが続いている。追いコン、友達とのパーティー、卒業旅行…。さすがの私も「このメンバーで集まるのはあと1回か…。」などとしんみりと会う回数を指折り数えるようになった。4月からも筑波での生活が続く予定の私にとって、卒業はいまいちピンとくるものではなかった。しかし、ここ数日続いた卒業前のイベントのおかげで少し考えが変わったかもしれない。やはり、筑波大学の大学院に進むとはいえ、4月からは今までとは違う生活が始まるのだと思う。場所は変わらないけれど、心持ち次第で変わるものだろう。いや、むしろ今までと一緒ではいけないのかもしれない。卒業を意識し始めるのが遅かったかもしれないが、卒業式までの残り少ない日々で卒業を迎える心の準備をしたいと思う。そして4月からは心機一転、気持ちよく新しい生活のスタートを切りたいと思う。

 
マンチェスター大学留学中の研究室のメンバーと

Communicated by Kazuichi Sakamoto, Received March 23, 2005.

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