つくば生物ジャーナル Tsukuba Journal of Biology (2005) 4: TJB200503TH.
特集:卒業
生物学マニアのススメ芳賀 拓真(生物学類 4年生)
マニアとは何たるか マニア [mania] これは広辞苑からの引用である。 マニアは有利である しかしながら、マニアはその「マニアックさ」を発揮する分野において、大きなポテンシャルを持っていると私は考えている。一般的なマイナスのイメージの影に隠れてしまうが故に、そのポテルシャルの価値は過小評価されているに違いない。マニアはマニアックさを発揮する分野に異常に熱中しているのであるから、知識が非常に豊富であろうし、注ぎ込む情熱も計り知れず、かつ負けず嫌いである。その熱中する分野においては他人の追随を許さない。いわば敵なしである。ある分野において多くの知識を身に付けており、実行力も備わっているのであるから、それだけ有利なのである。 マニアの分別 学問の分野においても有利な条件をもつであろうマニアであるが、注意するべきことがあるのを忘れてはならない。あることに常軌を逸するほど熱中するのはよい。だが、あくまで常軌を逸する「ほど」であり、本当に常軌を逸してはならない。もし常軌を逸してしまったならば…あとは想像がつくだろう。常軌を逸してしまったからそこ、マイナスのイメージがもたらされるのである。 生物学類のマニアたち 生物学類生の多くは皆、少なからず隠れマニアであると私は感じる。私は生物学類のAC入試一期生として入学し、生物学徒として学んできたが、少なくともAC入試合格者は皆、個性が強くマニアックである。あるタクサ、もしくはある生物学分野において、抜きん出た知識と情熱を持っている学生が多い。いわば多くが生物学マニアである、といっても過言ではないと思う。 生物学マニアのススメ筑波大学は、生物学マニアにとって好適な条件を具えている。実験カリキュラムは充実しているし、講義の幅も広い。加えて、先生方の士気も高い。さらには、キャンパスの周囲に各種の研究所が林立していることもおおきな強みである。学問に注ぐ情熱と実行力しだいで、興味の深淵へとアプローチすることが可能なのである。学内のみならず積極的に学外へも足を運ぶことで、新たな進路を開拓することができる。刺激的でマニアックな学友とともに4年間、情熱と実行力のおもむくまま切磋琢磨した暁には、他者の追随を許さない熱心な生物学徒として、実践と要求に耐える確かな知識を身に付けることができるだろう。筑波大とつくば市の恵まれた環境を生かし、興味の向くまま、勉強・研究生活に専念してみてはどうだろうか。 さいごに 今、満開の桜を見下ろすことのできる国立科学博物館新宿分館の5階の院生室にて、この(過激な)文章を書いています。私が入学してから早や4年、あっという間に大学生活は終わってしまいました。年を追うごとに一年が過ぎるのが加速度的に早くなり、4年次の一年は僅か数ヶ月しか経っていないように感じられます。そして気が付いてみるともう修士課程。しかし、熱心で個性的な多くの学友とともに過ごした日々は鮮明に思い出されます。自主ゼミでの熱い議論、数日徹夜の実験などは勿論のこと、講義の代返が発覚した時のショックや飲み会でのハプニングなどは昨日のことに蘇ってきます。思い返せば私は小学校のときから軟体動物のことばかり考えていて、思考の中心は軟体動物という毎日でした。要は貝マニアです。しかしながら、学部で学んでさまざまな知識を吸収するにつれ、そしてさまざまな価値観をもつ学生や研究者に触れるにつれ、ひょっとしたらマニアは研究上でも有利なのではないか、単語から連想される評価に臆する必要はないのではないかと考えるようになりました。ある分野に熱中できることは研究上でも有利な材料だと思います。生物学類は自身の興味をより深く掘り下げることのできる環境が、ハード・ソフトの両面においてよく整備されています。なにもマニアになれ、と薦めているわけではありません。しかしながら、マニアックな興味をもっと突き詰めても悪くはない。マニアと呼ばれてもそれはそれで良いのではないでしょうか。恥ずかしがることは無い、いや、寧ろマニアは有利なはずです。情熱と実行力を前面に出して、時には激しく熱中して、自身の興味を深く追求していってください。ただ、自分の状況が把握できなくならないように、あくまで常軌を逸しない程度に、の話ですが…
Communicated by Hiroaki Sugita, Received April 23, 2005.
©2005 筑波大学生物学類
|