つくば生物ジャーナル Tsukuba Journal of Biology (2005) 4: TJB200508HU.

特集:大学説明会

カリキュラム・卒業後の進路

 漆原 秀子(筑波大学 生命環境科学研究科、生物学類カリキュラム委員長)

 筑波大学生物学類は、いわゆる理学部に相当する「自然学類」から独立し、生物で単独の学類となっています。他大学では「学部」に相当する大きな組織となっているのが特徴です。そのため、生物学の広い分野をカバーする豊富な教員スタッフを擁し、独自のカリキュラムに基づいて教育を行う自由度が高くなっています。また、海(下田)と山(菅平)の実験センターと最先端の組換え遺伝子実験が行える遺伝子実験センターを利用して、豊かな教育課程を実施できる環境が整っています。

 生物学類の教育課程は「幅広い知識と専門性を培うカリキュラム」を目指し、年次の進行とともに専門性が高くなるよう組み立てられています。まず1年次では広く基礎知識と教養を培うことを目的として、総合科目・外国語・情報講義等の共通課目と専門の基礎を必修科目として学びます。専門基礎としては、「概論」科目と「基礎生物学実験」があります。「概論」は生化学概論、細胞学概論、発生学概論、植物生理学概論、動物生理学概論、遺伝学概論、生態学概論、分類学概論の8種類で、生物学のスタンダードな分野がカバーされています。「基礎生物学実験」は1年間を通してさまざまな生物種を扱い、基礎的な実験手法を学ぶ非常に充実した授業(実験)です。

 このように生物学の幅広い分野について学んだ後、1年次の終わりごろに「コース分け」を行い、2年次からの主専攻・コース別の専門教育を受ける準備をします。現在、生物学類では2専攻・4コース制となっています。主専攻は「生物学基礎」「生物学応用」の二つで、「生物学応用」の主専攻には、「機能生物学」、「応用生物学」、「人間生物学」の3コースがあります。応用生物学は農学との、人間生物学は医学との学際領域で、それぞれの専門教員による授業が行われます。これに関して注意していただきたいことが1点あります。平成18年度に入学される方は現在の2専攻・4コース制で学んでいただきますが、平成19年度に新1年生となられる方からは、「生物学」主専攻のもとに「多様性」、「情報」、「分子細胞」、「応用生物」「人間」の5コースがおかれる新体制が適用される予定です。生物学は今日発展が著しい学問領域であるため、現状と将来のニーズによりよく対応するよう改組を計画しています。「情報コース」が新設で、その他のコースはほぼ現在の4コース(生物学基礎の主専攻を含む)が対応しています。

 2年、3年次で専門科目を学びます。1年次のように必修科目で時間割がほとんど埋まるということはありませんから、他学類の授業をとるゆとりもできてきます。専門科目は、コース内から12単位、コース外の専門科目から12単位取得することが卒業に必要な要件となっています。そうして自分が興味をもち、実際に研究に従事する特定の研究領域を絞っていくのですが、3年次の3学期にはその前哨戦として「卒業研究」を希望する研究室の指導教官のもとで関連の学術論文を読み進める「生物学演習」があります。そのための研究室選びは3年の2学期に行われます。ですから、2年次と3年次の1学期とでしっかり専門科目を勉強しておくことが必要です。4年次になると通常の授業はすべて履修済みになっており、それぞれ希望の研究室に所属して1年間みっちりと「卒業研究」を行います。生物学類教育課程のイメージがつかめたでしょうか。具体的な内容については、学類案内や生物学類ホームページを参照してください。

 では次に卒業後の進路についての現状を紹介します。生物学類卒業生の80%〜90%は大学院修士(前期)課程に進学します。残りの10%〜20%は企業等に就職しますが、この場合専門性が生かせる研究職に就くことができるケースはほとんどないようです。また、卒業後直ちに高校までの教員として活躍する場合もありますが、傾向としては修士課程を修了してから教員になるケースの方が増えているようです。

 修士課程を修了すると専門職としての活躍の範囲が広がります。多くは企業(研究・開発部門など)に就職しますが、教員(中学・高校)や公務員(国家I種、地方上級)になる場合もあります。修士として就職する人は約60%で、残りは博士(後期)課程に進学して博士の学位を取得します。博士号取得者の半数以上は大学教員や研究機関(国公立・民間)の研究員として研究活動を継続しています。残りの人たちは修士取得者と同様に就職しますが、もちろんこの場合、待遇や実際の職務内容は違っているはずです。

 生物学類担当教官は生物学類卒業生が研究を継続し、世界をリードする研究者として活躍することを強く望んでいますが、同時にまた、専門的知識をもつ人材が教員や博物館の学芸員、あるいはジャーナリストとして社会との接点となり、正しく生物学の知識を社会に広めてくれることをも望んでいます。これは今日非常に大切な役割だと考えられています。ですから、皆さんが筑波大学生物学類に入学なさった場合には、是非早いうちに自分の進む道を決定し、将来を見据えた学習計画を立てて勉学に励んでいただきたいと思います。特に教員免許や学芸員資格の取得には1年次のうちから履修しておかなければならない専門外の授業がありますから、十分注意してください。皆さんが生物学類で学習される日を待ち望んでいます。


大学説明施設見学会:相談室

Contributed by Hideko Urushihara, Received August 12, 2005.

©2005 筑波大学生物学類