つくば生物ジャーナル Tsukuba Journal of Biology (2005) 4: TJB200508MKanno.

特集:大学説明会

大学説明会に参加して

環野 真理子(筑波大学 生物学類)

 私が生物学類の大学説明会にTAとして参加するのは2回目になります。今年は2日間開催され、総合研究棟A棟をフル活用して新しい試みもいくつか行われました。去年と比較しても内容も更に充実し、高校生にも楽しんでもらえたかと思います。その中で私が午後から担当した研究発表についての内容と気づき、反省会で学生側から出た意見などを中心にお話したいと思います。

研究発表

 公開講義室で行われた研究発表は1日目は6名(下田は1枠で2名)、2日目は5名の先生方が30分ずつお話されました。公開講義室の入り口がわかりづらかったこと、時間が大幅にずれて終了時刻が16時を過ぎてしまったこともあって初めの頃は席のほとんどが埋まっていましたが、終了するころまでにだんだんと減ってしまいました。休憩所代わりに寄ってくださいと宣伝しておりましたが講演の途中からは入りづらかった人もいたかと思います。2日目は1日目の反省を踏まえて入り口に張り紙をして入り口の場所、時間のずれと現在の演目について外からわかりやすくしました。また、TAがこまめにアナウンスをして外で所在無げな高校生達を入れるようにしました。結果、1日目よりはコンスタントに人の入りは良かったものの、やはり最後には時間が遅くなり、1日目と変わらない人数でした。2日間経験してみての印象は、高校生にもそれぞれに興味があるので聴衆の人数に差が出ることはある程度仕方がないにしても、帰りの時間を気にしなくてはいけない遠方からの高校生達が多いため、時間をオーバーして発表を行った事は後の順番の先生方に申し訳なかったと思います。外に出て高校生に発表を聞くように勧めてみても、「時間が…」と言って帰ってしまう人が大半でした。人数を見ていると発表の時間は15時半くらいまでが限界かと思います。また、内容的には非常に興味深くて貴重なお話でも休憩代わりに聞くにはあまりにも高校の生物の内容とかけ離れた演目が多かったため、理解しづらいところもあったと思います。質問があまり出なかったのはそれも一因かと思います。ご自分の研究内容について発表されるにしても、どういう分野なのか高校生レベルでも一目でわかるようなタイトル、内容にしていただけたらと思います。内容やタイトルの中に高校の教科書レベルのキーワードを織り交ぜていくと、高校生でもついていけると思います。また、30分1人の先生のお話を聞くより、もう少し時間を短めに設定したほうが高校生の集中力も続くと思います。中にはこの発表がぜひ聞きたい、と言う子もいて、その子にはその先生の時間まで近くのブースを見学してもらって、時間になったら呼びに行くという対応をしました。TAが2人いるとそのような対応も可能です。

全体の反省

誘導
 誘導は現在のような各所にTAが立つやり方よりもバス停まで1人のTAが数名ずつを迎えに行って交代で案内したほうがコミュニケーションが取れて雰囲気が良い、という意見が出ました。そのやり方をする時も、TAの先導に漏れてしまった人のためにある程度は各所に立って誘導するTAも残すほうが良いと思います。去年もそうでしたが他の学類ともっと連携を取れていたら良いと思いました。大学中央のバス停から他学類の誘導がない場合、他学類志望の生徒が多くH棟に迷ってきてしまいました。そのような時に他学類と連絡が取り合えれば、高校生を余計に歩かせたり、TAが学内を歩き回る必要がありません。事前に他学類がどこで全体説明会を行うのか把握しておくことも必要です。

全体説明会
 学生による説明会では例年よりも個性的で、またパワーポイントを多く使った発表が好評でした。留学の話や入試の話、学生生活などは全体で話せることには限度があるので短めにして、その分午後からの個別相談を充実させるほうが良いと思います。また、前日の準備の時に話す内容を委員の先生方や他のTAでチェックして、高校生にどう伝わるか、意見交換をしたほうが良いと思います。TAも一緒にチェックすることで独りよがりの意見になることを防ぎ、また先生方から過度の制限をかけられにくくなるので学生代表として適切な発表が行えます。

ブース見学
 文字と写真のみの展示よりも生物の実物や標本、顕微鏡などの器具の体験などができるほうが高校生の興味を引いているようだったとの意見が多くのTAの印象です。大学の生物学は高校の内容とかけ離れていることが多いため、高校生に楽しんでもらうには何か高校の生物と大学の生物の橋渡しをする道具が必要です。例えば研究発表の項で述べたように高校の教科書レベルのキーワードを入れる、教科書に出てくるようなカエルやウニ、ショウジョウバエなどの生物の展示、実験を行う、などです。高校のうちは講義ばかりで実験が少ないこと、また1,2年生の参加者も多く、今の時点では高校の生物の範囲すらほとんど終わっていないことを考えると、体感型の企画は興味を引くと思います。

休憩室、相談室
今回保護者用の休憩室を2階に設けたため、ほとんど利用されませんでした。保護者と生徒の休憩室を区別せずに人の流れの多いところに置き、そこを現役学生とのコミュニケーションの場として利用したほうが良いと思います。今回相談室が閉鎖的なこぢんまりとした空間だったので、相談室の機能を大幅に増やし、入試、学生生活、留学など幅広い相談ができると良いと思います。今回は案内所のTAが積極的にその役割を果たしてくれたようです。TAは先生方よりも高校生との距離が近い存在です。TAの最も重要な役割は先生方と高校生をつなげること、生物学類と高校生をつなげることにあると思います。高校生が実際の学生の話を聞いて筑波での大学生活に希望を持ってくれるなら、TAはその役割を果たせたといえるでしょう。そのためにTAは自分から積極的に高校生とコミュニケーションをとることが必要です。なんでもこちらから働きかけなくては高校生は遠慮して何もしようとはしないでしょう。相談室、休憩室には学生のスケッチやメッセージ、宿舎、サークル、学内行事等の情報をおいて副次的な機能を持たせるのも良いのではないでしょうか。

 私は高校生の時、大学説明会に行くことができなかったので裏方として参加していつもこんなに一生懸命に先生方に準備していただいて豊富な研究について触れる機会をもつ高校生をうらやましく思います。しかし同時に、やっぱりこの説明会の価値は大学に入ってみないと分からないのではないかとも思います。高校生の時はそれほど大学という存在は未知の世界でした。だから高校生には今は大学の制度や先生方の研究の内容が理解できなくても、「生物学類に入学したら面白そうだ!」という印象を持ってもらえたらよいな、と思います。遠路はるばる筑波にやってきて、最先端の生物学に触れることができた高校生の皆さん、お疲れ様でした。来年の春にまたお会いしましょうね!

Communicated by Shinobu Satoh, Received August 2, 2005.

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