つくば生物ジャーナル Tsukuba Journal of Biology (2006) 5: TJB200610YS1.

特集:ムシ(節足動物)の世界(平成18年度筑波大学公開講座)

社会人対象公開講座

齊藤康典(筑波大学 生命環境科学研究科)

 9月30日の土曜日に、「ムシ(節足動物)の世界」というタイトルで、生物学類開設の社会人対象公開講座を行った。昨年と一昨年は「植物の世界」と言うタイトルで土、日の二日間の開講であったが、今年度は新しいタイトルで期間も一日で行うこととなった。このような公開講座を開講することで、生物学類は、社会教育や生涯教育などで社会及び地域へ積極的に貢献しようとしているのである。

 今回の講座では、つくば市及び周辺の土浦市、牛久市、つくばみらい市、取手市、桜川市、常総市、阿見町からだけでなく、水戸市、東京都、遠くは広島県からの37名が応募し、その内31名(男性15名、女性16名)が受講した。受講生の年齢分布は20歳未満が3名、20歳代が4名、30歳代が6名、40歳代が3名、そして50歳以上が15名と年齢層の幅が広かった。そして、講義終了後、受講者31名全員に修了証書を授与した。

 この講座では、生物学類の5人の教員が講師となり、ムシ、主に節足動物について、以下のようなタイトルで、ムシの世界のおもしろさを紹介した。山岸宏先生は「ムシのいろいろ」、徳永幸彦先生は「国境の無い豆蔵虫 -害虫が教えてくれる進化論-」、戒能洋一先生は「パラサイトな昆虫たち」、町田龍一郎先生は「昆虫に見る進化 -何とすばらしい昆虫たち-」、そして、青木優和先生は「海中の虫たち -ワレカラの秘密-」と、講演者の研究分野と関連したムシの話をしてもらった。今年度は新しいタイトルで開講したため、受講者の数が定員のどれだけ集まるのか不安であったが、定員以上の応募者があり、市民の皆さんの関心の高さに驚くばかりであった。

 受講者の構成は、男女ほぼ半々であったが、年齢層が13歳の中学生から74歳の人まで幅広く、講師の先生にとっては非常に話しづらかったと思われる。現にアンケートでおもしろかったという意見もあったが、もっと分かり易い言葉で話してほしかったと言う意見もあって、内容の理解度に差が現れていた。しかし、質問も時間オーバーするくらい多数出て、さらに、アンケートで、講座内容に満足したと答えた人が77%あり、不満と答えた人は3%で、年齢も基礎レベルも幅広い分布を示した受講者対象の講座としては、十分に目的を達成したと思われる。そして、アンケートの記述回答では、生物や環境に関するさまざまなテーマの講座を望む意見があり、受講者の生物学に対する学びたいという熱意が強く感じられた。一方、今年は途中での脱落者もなく受講者全員に修了証を与えることが出来た。これは授業時間数が適当であったためと思われる。アンケートでも講座の時間数について、多いと答えた人が23%、少ないと答えた人が10%で、61%の人がちょうど良いと答えていた。

 今回の講座での問題点として指摘されたのは、質問が多数あったため休憩時間や昼食時間に食い込んでしまったことで、このことは世話人の責任であり、今後はだらだらと質問時間を長引かせないで時間通りに進行させるか、少し時間に余裕を持たせたスケジュールにするなどの工夫をしたいと考えている。最後に、本講座は地域及び社会貢献を目的としていたため、講習料を徴収しなかった。その結果、本講座の講師の先生方には、休日にもかかわらず謝金無しで、しかも菅平や下田のセンターのような遠方からの先生は交通費も自腹をきっていただき、全くのボランティアでやっていただくことになってしまった。世話人として、講師をお引き受け頂いた先生方に、この場を借りて深くお礼申し上げたい。

Contributed by Yasunori Saito, Received October 20, 2006.

©2006 筑波大学生物学類