つくば生物ジャーナル Tsukuba Journal of Biology (2007) 6: TJB2007G110511

植 物 生 態 学 I     Plant Ecology I

科目番号: G11 0511
単位数: 2単位
標準履修年次: 2・3年
実施学期 曜時限: 第1・2学期 水曜日 2時限
担当教員: 濱 健夫、大橋 一晴


第1学期(担当教員: 濱 健夫)

授業概要:
 海洋に生息する植物の生態を、主として物質生産と環境要因との関係を通して理解することを目的とする。
 特異的な分布を示す海洋の藻類の現存量・生産量に対する規定要因を学ぶことにより、藻類の代謝の特性と環境要因とが、どの様に密接に結びついているかを知る。さらに、海洋の食物連鎖の出発点として機能している藻類の有機物生産の生態系における役割について、特に有機物の組成面から解説する。

授業内容:
(1)海洋と陸上における植物の現存量と生産量
(2)海洋生態系における植物の種類と生態学的特性
(3)海洋における藻類の現存量・生産量の規定要因
(4)藻類と光 1)海洋への光の透過と光合成生産
(5)藻類と光 2)光の波長組成の深度変化と光合成生産
(6)藻類と栄養塩 1)栄養塩摂取機構
(7)藻類と栄養塩 2)海洋の栄養塩分布と栄養塩摂取
(8)藻類の光合成 1)環境要因の変動と生産物組成
(9)藻類の光合成 2)細胞外生産物と生態学的意議
(10)まとめ

前提科目・履修上の注意事項:

単位取得条件、成績評価基準:  学期末試験と出席状況

指定教科書: 特になし

参考書・文献:
1)水と生命の生態学 日高敏隆編 講談社
2)藻類30億年の自然史 井上 勲 東海大出版会
3)生物海洋学入門 関 文威監訳 講談社

オフィスアワー:
月・水・金曜日の午前。生物農林学系棟B617(Tel.7261)
メールによる問い合わせも歓迎(thama@biol.tsukuba.ac.jp)

備考(受講学生に望むこと):



第2学期(担当教員: 大橋 一晴)

授業概要:
 花とポリネーター(花粉媒介動物)の送粉共生系は、決して相互利他的なものではない。花は低コストで多くの花粉をはこんでもらうために、ポリネーターは低コストで多くの餌を手に入れるために、それぞれがお互いを出しぬこうとする「軍拡競争」的な進化をくり返してきた。本講義では、利害の不一致という観点から花とポリネーターの関係を見直し、ポリネーターの行動をもとに花がたどった進化を理解しようとする「花生態学」の最近の潮流と、その理解に必要な基本概念について解説する。

授業内容:
(1)序章:花の進化をめぐる数々の疑問
(2)最適戦略モデルと生物が実践する簡単なルール:ポリネーターの都合・その1
(3)花とポリネーターの利害の不一致がもたらすもの1:雌雄を分離する戦略
(4)花とポリネーターの利害の不一致がもたらすもの2:動物をあやつる戦略
(5)花とポリネーターの利害の不一致がもたらすもの3:動物をあてにしない戦略
(6)進化的に安定な戦略:ポリネーターの都合・その2
(7)ポリネーターの空間移動と植物の交配パターン:新たな発見の可能性
(8)拡散共進化と送粉シンドロームのパラドクス1:挑まれる「ステビンスの公理」
(9)拡散共進化と送粉シンドロームのパラドクス2:拡散共進化系における
花の形質の特殊化
(10)予備日

前提科目・履修上の注意事項: なし

単位取得条件、成績評価基準: 学期末試験の点数と出席状況を考慮して、A〜Dの四段階評価をおこなう。

指定教科書: 特になし

参考書・文献:
1) 花に引き寄せられる動物〜花と送粉者の共進化 井上民二・加藤真/著 平凡社(1993)
2)動物と植物の利用しあう関係 鷲谷いづみ・大串隆之/著 平凡社(1993)
3)花生態学の最前線 種生物学会/編 文一総合出版(2000)
4)花の性 矢原徹一/著 東京大学出版会(1995)
5)植物の繁殖生態学 菊沢喜八郎/著 蒼樹書房(1995)
6)行動生態学入門 粕谷英一/著 東海大学出版会(1990)

オフィスアワー:
不定期なので事前にアポを取ること(kohashi@ies.life.tsukuba.ac.jp)。

備考(受講学生に望むこと): 特になし


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