つくば生物ジャーナル Tsukuba Journal of Biology (2007) 6: TJB2007G300901

動 物 生 理 学 I     Animal Physiology I

科目番号: G30 0901
単位数: 2単位
標準履修年次: 2・3年
実施学期 曜時限: 第1・2学期 月曜日 1時限
担当教員: 山岸 宏、千葉 親文


第1学期(担当教員: 山岸 宏)

授業概要・目的:
 動物は従属栄養生物であり、生存のためのエネルギー源を体外から取り入れら有機物に依存している。そのため動物は餌を捕食したり、あるいは捕食者から逃れたりするための運動器官を発達させると同時に、膜の電気的興奮性を用いた情報伝達系である神経系を発達させた。動物は神経系を介して外界からの様々な刺激を受容し、さらにそれらの情報を統合・処理して、状況に応じた適切な行動を発現している。生体におけるこれらの動物性生理機能、特に神経系の働きを理解するための基礎的な知識として、膜興奮を初めとした生体膜の様々な基本的性質やそれらの研究の歴史的背景について、動物界における神経系の進化的な発達の過程を踏まえて概説する。

授業内容:
(1)生物における電気現象 
(2)細胞膜の電気的性質
(3)膜電位の発生機構  
(4)活動電位の発生とその伝導
(5)感覚受容の仕組み
(6)シナプスにおける信号伝達
(7)運動器官の神経制御
(8)神経系における情報処理機構 
(9)神経細胞の分化と神経回路網
(10)神経系の系統的発達

前提科目・履修上の注意事項: 動物生理学概論を履修していることが望ましい。

単位取得条件、成績評価基準: 学期末に論述形式の試験を行う。

指定教科書: なし。(ハンドアウトを配布します。)

参考書・文献:
1)「脳・神経と行動」佐藤真彦(著)、生物科学入門コース6、岩波書店
2)「脳と行動の生物学」藤義弘・高畑雅一(著)、講談社サイエンティフィク
3)「ニューロバイオロジー」GMシェパード著,学会出版センター
4)Eckert, Animal Physiology(Randall, Burggren, French,1997、W.H.Freeman and Company)

オフィスアワー:
各曜日5時以降;生物農林学系棟B611
TEL: 853-6670 e-mail: Yamagishi@biol.tsukuba.ac.jp

備考(受講学生に望むこと): 積極的な学習


第2学期(担当教員: 千葉 親文)

授業概要・目的:
 動物の行動は一般に環境からの刺激を受容することにより生じる。まず,感覚器によって受容された刺激は神経情報に変換され,脳・中枢神経系において統合・処理される。次に,そこで形成された指令情報が効果器である筋などを適切に駆動することにより一連の行動が発現する。この授業(動物生理学I・第2学期)の目的は,こうした行動を制御する神経系について,特に脳・中枢神経系でなされる高次な情報処理について学ぶとともに,その成り立ち,および多くの動物が生存戦略として発達させた神経系の修復・再生の現象を理解することにある。講義ではまず,神経系を構成する様々なニューロンの活動とシナプスにおける多様な情報伝達様式について概説する。次に,無脊椎動物や脊椎動物の脳・中枢神経系でなされる高次な情報処理、例えば,感覚情報の処理,記憶・学習,運動の制御機構について概説する。続いて,自発的あるいは定型的な運動パターンの形成機構とそれらの修飾機構について概説する。最後に,神経系の発達と修復・再生機構について概説する。

授業内容:
(1)シナプスの構造と神経情報の伝達
(2)シナプスにおける多様な情報伝達様式
(3)脳・中枢神経系における情報処理1(感覚)
(4)脳・中枢神経系における情報処理2(記憶・学習)
(5)脳・中枢神経系における情報処理3(運動)
(6)中枢神経系による運動パターンの形成
(7)中枢神経系による運動パターンの修飾
(8)脳・中枢神経系の発達
(9)神経系の再生1(軸索再生とシナプス再形成)
(10)神経系の再生2(神経組織の修復と再生)

前提科目・履修上の注意事項: 動物生理学概論を履修していることが望ましい。

単位取得条件、成績評価基準: 学期末に論述形式の試験を行う。

指定教科書: なし。(ハンドアウトを配布します。)

参考書・文献:
1)「バーン・レヴィ生理学」坂東武彦,小山省三(監訳)西村書店
2)「神経科学キーノート」A.ロングスタッフ著,シュプリンガー東京
3)「ニューロバイオロジー」GMシェパード著,学会出版センター
4)Principles of Animal Physiology.(Christopher D. Moyes, Patricia M. Schulte, 2006, Pearson Benjamin Cummings)
5)Regenerative Biology and Medicine. (David L. Stocum, 2006, Academic Press)

オフィスアワー:
木曜日16時から18時まで,他随時;生物農林学系棟B607
TEL: 853-4667 E-mail: chichiba@biol.tsukuba.ac.jp
Website: http://www.biol.tsukuba.ac.jp/~chichiba/

備考(受講学生に望むこと):
積極的な質問と自主的な学習により授業内容の理解に努めて欲しい


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