高 碩敏(Sukmin Ko)

研究テーマ:  
ニンジンECP遺伝子のプロモーター解析

研究概要:

 
   生物は1個の細胞から1個体の生物に発生しうる能力、いわゆる分化全能性を持っている。高等植物において、分化した体細胞が、受精卵と類似した胚発生の過程を経て完全な植物体に発達する不定胚分化という現象は、植物細胞の持つ分化全能性のよいモデルとなっており、胚発生のモデルともなっている。特に、不定胚形成の誘導が簡単に制御できるニンジンは胚発生のモデル系として様々な研究に用いられてきた。本研究室のこれまでの研究で、不定胚形成能を持つ embryogenic cellには存在するが、不定胚形成能を持たない non-embryogenic cellには存在しないembryogenic cell protein (ECP)31, 40, 45, 63, 65などが同定されており、そのうちECP31,40,45,63などのc DNAが単離された。これらのECPは、胚的な要素を持つ器官ではABAによる発現誘導が見られるが、実生など胚的な要素を持たない細胞ではABA処理によっても発現が見られない。このことから、ABAにくわえて胚的もしくわ組織特異的な因子による発現誘導の可能性が示唆されている。最近、これら遺伝子の発現は、ABA情報伝達に関わっていると思われるC-ABI3の制御下にあることがわかってきた。そこで、本研究ではこれらの遺伝子のプロモーターの解析によりC-ABI3との相互作用を明らかにし、一連の胚特異的なABA誘導型遺伝子の発現制御機構解明の研究の土台を作りたいと思っている。