植物では、培養細胞の分裂や増殖に最初の細胞密度に厳密に依存している。低細胞密度の条件下での細胞は、機知の植物ホルモンを添加してもその細胞の増殖は改善されないが、活発に細胞分裂が行われる細胞密度で培養した培地(conditioned
medium)を一定量添加することで細胞増殖が促進されることが知られている。このことは、未知の細胞増殖因子がconditioned
mediumの中に存在することを示唆している。この増殖因子の探索は1970年代ごろから行われてきたが、本体を発見するまでには至らなかった。 最近になり、アスパラガス葉肉細胞培養液由来のconditioned
mediumから2種類のペプチド性細胞増殖因子(PSK−α、PSK−β)が、高等植物では初めて単離された。しかし、このPSKは新規に発見された物質であるため、その生理的役割についての情報がほとんどない状況である。そこで、本研究では、ニン
ジン組織培養系を用い、機知の植物ホルモンによる各種生理作用に対するペプチド性増殖因子であるPSKの効果を調べることで、その生理機構を明らかにすることを目的としている。