つくば生物ジャーナル Tsukuba Journal of Biology (2003) 7: TJB200307QA.

特集:大学説明会

参加希望者からの主な質問内容Q&A


1. 教育内容について

Q:学類の授業の特色は何か
A:生物学類の最大の特色は、一学年の学生定員80名、教官数50名と全国最大規模を誇り、学べる領域が多岐に渡っているため、学生が選択できる専門分野の数が多いことである。また生物学類は、全学で卒業生の授業に対する満足度が最も高い学類である。しかも以下の2点は他のどの大学にもない生物学類独自の極めてユニークな特色である。

  1. 基礎生物学を重要視した基礎主専攻と応用主専攻の機能生物学コース:生物学のバックボーンとなる学問分野で、多くの国立大学では改組リストラによって消滅させた系統分類学や環境生態学など、生命現象を生物集団レベルで統合的に解明していこうとする統合生物学を主体とした基礎主専攻が中核となっている。もちろん最近の伸展が目覚ましいゲノムサイエンスや遺伝情報発現系、シグナル伝達、神経生理など、分子生物学的手法を用いることで生命現象を分子レベルで分析的に解明していこうとする情報生物学が中心の機能生物学コースも充実している。
  2. 学際生物学を重要視した応用主専攻の応用生物化学コースと人間生物学コース:他大学の生物学科は組織上、数学、物理、化学、地学とともに理学部の一学科として存在するのに対し、本学では生物学科だけが生物学類として独立し、学際性を特徴とする第二学群に所属している。このアドバンテージを存分に生かしたのがこれらのコースの特色で、数学や物理学より生物学の応用分野である農学や医学との接点の方がより強い。応用生物化学コースは生化学や酵素化学、人間生物学コースはウイルス学や免疫学の講義も取り入れているのが特色である。
    多くの大学の生物学科は改組によって何と基礎生物学の分野をリストラし、分子生物学のような売れ筋の分野のみを集めた単純なコンビニ・カリキュラムに変身している。これに対し生物学類では本学類の長い伝統にはぐくまれた基礎生物学の分野を大切にしているだけでなく、流行の分子生物学はもちろん、他大学では全く手を着けていない生物学と農学や医学など実用的学問との融合分野を精力的に取り入れた学際的なコースも開設している。このようなそれぞれのコースの多様な特色は、様々な個性と可能性を持つ学生諸君の要望に十分対応できるものであり、生物学類生や卒業生だけでなく社会からの評価も極めて高い。

Q:生物資源学類との違いは何か
A:生物学類が基礎科学としての生物学を指向しているのに対して、生物資源学類は農学・林学などの実用的学問領域を指向している。詳しくは、生物資源学類 (http://www.bres.tsukuba.ac.jp/gakurui/)、のWebサイトも参照されたい。

Q:人間生物学コースで学ぶ医学と医学専門学群との違いは何か
A:生物学類の人間生物学コースは特に医学の基礎研究領域との学際生物学を学び、この分野の研究者を目指す教育を行っている。したがって、医師になることはできない。これに対し医学専門学群の医学類は医師になり、医療にたずさわる人材を育成することを目的としている。医学専門学群のことについては医学専門学群 (http://www.md.tsukuba.ac.jp/public/md-school/) のWebサイトも参照されたい。

Q:他の学群・学類の授業はどの程度受けられるのか
A:1年次には必修科目で時間割のほとんどが埋まってしまうので、他学類の講義を履修するのは難しい。しかし、2, 3年次では余裕ができるので他学類の講義を履修する機会は十分あり、主専攻コースや時間割の組み方にもよるが、教職を取っている場合を除けば、多い人で年間3-8科目くらい履修が可能である。

Q:希望どおりの専攻に進めるのか(希望しても人間生物学コースに進めないことがあるのか)
A:人間生物学コースのみ実習定員の関係から20名を定員としているが、毎年ほとんど学生の希望通りになっている。ただし、定員を越えた場合は、主に志望理由書を中心に厳正に選抜している。

Q:講義中心か、実験などが中心となるか
A:本学は3学期制で、1時限が75分の講義を1学期間で約10回分受講して1単位が認定される。生物学類の場合、講義と実験実習が1年次で約45単位、2年次で約45単位、3年次で約30単位、4年次は卒業研究(6単位)が中心となる。具体的に言えば、1年次では講義が主体で1日平均5時限分が埋まることになる。2, 3年次では講義数は減るが、その分週に3-4回の実験実習が主体となる。 ただし、誤解してほしくないのは高校までのカリキュラムと違い、大学のカリキュラムの場合は、その内容を完全に理解すればよいというものではない。最も大切なのは、講義や実習をきっかけとして自分が専攻する分野を見つけ、その分野の勉強や研究を自ら積極的に進めて行き、その中から卒業までに自分の進むべき進路を決定することなのである。

Q:学内に多くの研究センターがあるが、そこでどのような研究できるのか
A:生物関係の研究センターとしては、先端学際領域研究センター(TARA)、陸域環境研究センター 、遺伝子実験センターなどがある。先端学際領域研究センターでは、時限的なプロジェクト研究として老化やミトコンドリア病の研究、脳の学習記憶中枢形成の研究、環境適応・応答の研究などが行われている(http://www.tara.tsukuba.ac.jp/)。陸域環境研究センターでは、地球温暖化に対する陸域生態系の応答の研究などが進められている(http://www.suiri.tsukuba.ac.jp/)。遺伝子実験センターでは、微生物、植物、動物の遺伝子に関連する多岐にわたる研究が多くの研究グループにより行われている(http://www.gene.tsukuba.ac.jp/)。

Q:高校で生物を取らなくても、授業についていけるか
A:1年次に必修として受講する概論科目で高校生物の内容を取り上げつつ講義するので、生物学に対する興味と勉学意欲があれば全く問題ない。もちろん高校生物の教科書を通読しておけば役に立つはず。

Q:動物や植物の生態についてどのような講義や実験があるか
A:生態学概論、植物生態学I、植物生態学II、植物生態学実験、動物生態学I、動物生態学II、動物生態学実験、水圏生態学、生態学臨海実習、生態学野外実習などが開講されている。(http://www.biol.tsukuba.ac.jp/cbs/SyllabusHP/

Q:遺伝子関係の研究には、どのようなものがあるか
A:昨年度の卒業研究のタイトルからいくつか拾っただけでも、「老化に伴うヒトミトコンドリア機能低下の原因遺伝子の探索」、「イモリ網膜再生の時期特異的遺伝子の単離」、「グラム陰性細菌におけるニトリル代謝関連遺伝子の解析」など多数ある。
  詳しくは卒業研究のWebページ(http://www.biol.tsukuba.ac.jp/cbs/sotsuken/)や生物学類教官の研究領域の紹介Webページ(http://www.biol.tsukuba.ac.jp/cbs/kyoukan/)を参照してほしい。

Q:生物工学関係の研究には、どのようなものがあるか
A:昨年度の卒業研究のタイトルからいくつか拾っただけでも、「近交系マウスES細胞樹立の試み 」、「遺伝子導入免疫細胞を用いた悪性腫瘍拒絶モデルの確立_新規の樹状細胞癌ワクチンの開発_ 」、「骨髄組織幹細胞の可塑性の検討 」など多数ある。
  詳しくは卒業研究のWebページ(http://www.biol.tsukuba.ac.jp/cbs/sotsuken/)や生物学類教官の研究領域の紹介Webページ(http://www.biol.tsukuba.ac.jp/cbs/kyoukan/)を参照してほしい。

Q:卒業研究のテーマにはどのようなものがあるか
A:昨年度の卒業研究のタイトルから6つ拾っただけでも、「ヤドリバエDrino inconspicuoidesの産卵行動について」、「海底熱水系から得られたウイルスの精製」、「生殖医療と遺伝学への関心について」、「酸性分子シャペロンTAF-氓フ発現調節に関する解析」、「ヒカリモ(黄金色藻綱)における浮遊細胞の微細構造と分類学的研究」、「ショウジョウバエ触角葉発生機構の遺伝学的解析」など、多岐にわたる専門分野のタイトルが並ぶ。Q:学類の授業の特色は何か、の答えにも書いてあるとおり、生物学類の教官は実に広範囲の生物学の専門家が揃っており、あらゆる分野の卒業研究テーマが提案される。詳しくは、卒業研究のWebページ(http://www.biol.tsukuba.ac.jp/cbs/sotsuken/)、または「つくば生物ジャーナル」Vol.2 No.2, 2003(http://www.biol.tsukuba.ac.jp/tjb/Vol2No2/)を参照のこと。

Q:期末試験のようなものはあるか
A:各学期の最終週に試験週間が設定されており、主に講義を中心に期末試験を行う科目が多い。しかし、レポートの提出のみで、期末試験を行わない科目もある。

Q:転学群・転学類は可能か
A:筑波大学には転学群・転学類の制度はあるので、条件を満たせば可能性はある。

Q:他大学との単位互換制度はあるか
A:交換学生プログラム協定を締結しているマンチェスター大学と単位互換制度がある。また、他大学で実施される公開臨海実習などを受講した場合、筑波大学の単位として認定されるものがある。

Q:国際交流・留学のために、TOEFL対策などの講義はあるか
A:生物学類として特別な講義は開催していないが、留学経験者・決定者からアドバイスを受けられるようになっている。

Q:マンチェスター大学への留学条件は何か
A:生物学類の3年生および4年生(留学時)で、派遣学生選考の応募基準としてTOEFL試験成績Paper based test 550 (Computer based test (CBT) 213)のスコアが最低の目安。詳しくは、生物学類国際交流のWebページ(http://www.biol.tsukuba.ac.jp/cbs/kokusaikouryu/)を参照のこと。

2. 学生生活について

Q:大学周辺にアパート等はあるか(家賃・間取り・安全性など)
A:学生向けのアパートはたくさんある。家賃・間取り、周辺環境などはさまざまなので、実際に見学してみたほうがよい。

Q:自宅通学が可能な地域はどのあたりまでか
A:常磐線沿線地域などから電車バス通学している例はある。また、つくば市近隣市町村から自家用車で通学している学生もいる。通学方法や時間距離にもよるので、一概にどの地域までが可能であると限定することは難しい。平成17年度に「つくばエクスプレス」が開通すると通学圏も都心まで広がる可能性がある。

Q:生物関係のサークルがあるか(それぞれの活動内容は)
A:海洋研究会(海洋生物の観察など)、ねっしー・自然教育研究会(小中学生中心に自然教育活動)、野生動物研究会(鳥、虫、魚などの野外観察)などがある。詳しくは、文化系サークルのWebページ(http://www.sakura.cc.tsukuba.ac.jp/~bunsa/およびhttp://www.stb.tsukuba.ac.jp/~bunsa/)を参照。

Q:体育会系のサークルにも入部できるか(実力の差はあるか)
A:時間と体力の余裕があれば、ほとんどの体育会系サークルに入部できる。生物学類の学生で、応援団長や体育会系サークルのレギュラークラスを勤めて、順調に卒業した学生もいる。実力については本人次第。

Q:大学で実施される行事にはどのようなものがあるのか
A:筑波大学のWebサイトに、学園祭、スポーツ・デー、宿舎祭の紹介がある。 (http://www.sakura.cc.tsukuba.ac.jp/~gakutan/event.html)

Q:学生はどのようなアルバイトをしているのか
A:家庭教師、塾講師、コンビニ店員、自然教育活動のスタッフなど様々。学群棟の掲示板にアルバイトの求人が掲示されている。

Q:授業料免除や奨学金制度にはどのようなものがあるか
A:授業料の減免措置として、各期(前期・後期)ごとの納入すべき授業料の全額又は半額を免除する制度がある。また,免除の他にも授業料の徴収猶予又は月割分納の制度がある。奨学金制度としては、日本育英会、地方公共団体、民間奨学団体がある。http://www.sakura.cc.tsukuba.ac.jp/~gakutan/healthlife.html(筑波大学Webページ修学支援)も参考になる。

3. 卒業後の進路・就職について

Q:主な就職先、職種について教えてほしい
Q:進学率と就職率が知りたい
Q:博士課程への進学とその後の進路について
A:生物学類の教育目標は生物学の研究者と教育者の育成である。したがって、私たちのカリキュラムは手に職をつけること、すなわち「役に立つ技術」を身につけることを目的としていない。私たちの教育の最も重要なセールスポイントは「役に立つ技術」ではなく「科学する能力」を身につけることなのである。「科学する能力」は、皆さんが大学院に進学して研究者になったり教育者になるには、当然必須のものである。ところが、この「科学する能力」は何も研究者や教育者にだけ必要なのではなく、実はどのような職種にも必ず要求される極めて重要な能力なのである。これは、「問題発見解決型学力」、つまり問題点を自ら見つけ、それを探求心や創造力を持って解決できる学力とまさに同等であり、21世紀の社会ではどのような職種であれこのような「科学する能力」がますます要求されるようになるはずである。
 生物学類卒業生の進学率(75−80%)は全学で最も高く、主に筑波大学の大学院に進学している。その中でも半数が修士課程、残りの半数が博士課程に進学している。大学院修了後は筑波大学、東京大学、京都大学などの大学、国立感染症研究所、国立がんセンター、国立遺伝学研究所、岡崎国立共同研究機構、理化学研究所などの研究所、製薬・食品などの企業で研究者として活躍している卒業生が多い。また、外国の大学や研究所で活躍する卒業生もいる。
 卒業生の約20パーセントは、企業、官公庁、学校などの社会の各分野で、未来志向と問題解決型の人材として高く評価され、社会の担い手として活躍している。企業では、製薬、食品、製造、マスコミ、IT、銀行などのほか、水族館などへの就職もある。具体的な内容は「生物学類卒業生の進路」(http://www.biol.tsukuba.ac.jp/cbs/gakuruiannai/epage20.html) を参照されたい。

Q:動物保護関係の仕事がしたいが、卒業生のうち、その方面への実績はどうか
A:研究者として希少動物の保護活動に関連した研究を行っている卒業生がいる他、日本野鳥の会職員、旅行会社のエコツアーの企画運営部門、県庁の環境部門などで活躍している卒業生もいる。

Q:医学方面への就職状況は
A:生物学類を卒業して製薬関係の企業に就職する卒業生がいる。また、大学院に進学後、製薬会社や大学の医学系部門、国立の研究所などで研究者として活躍している卒業生が多数いる。

4. 入学試験について

Q:推薦入試の面接と小論文では何が重要視されるか
A:面接では、生物学に対する考え方及び理解力を評価する。小論文では、生物学についての理解力および問題に対する論理的表現力を評価する。また、英語の学力も問う。正確には、筑波大学Webページ学群・学類入学情報(http://www.tsukuba.ac.jp/nyugaku/index.html)を参照すること。

Q:後期試験の面接の内容について
A:生物学に対する考え方、理解力を問う。正確には、筑波大学Webページ学群・学類入学情報(http://www.tsukuba.ac.jp/nyugaku/index.html)を参照すること。

Q:既卒でAC入試に出願した場合、不利になるのか
A:不利にならない。正確には、筑波大学Webページ学群・学類入学情報(http://www.tsukuba.ac.jp/nyugaku/index.html)を参照すること。

5. その他

Q:生物に関する筑波大学の教官の著作物を教えてほしい(高校生が読めそうな内容で)
A:「はじめてのえころじい」藤井宏一編著、裳華房、1995年
  「絵でわかる進化論」徳永幸彦著、講談社サイエンティフィク、2001年
  「ミトコンドリア・ミステリー」林純一著、講談社ブルーバックス、2002年
  「ホメオボックス・ストーリー:形作りの遺伝子と発生・進化」ワルター. J. ゲーリング 著、古久保-徳永克男共訳、東京大学出版会、2002年

Q:公開講座や講演会はどのようなものが実施されているか
A:毎年高校生対象の公開講座を下田臨海実験センターと菅平高原実験センターで夏休み期間中に実施している。今年度の講座内容は、「海洋生物の発生・生理・生態」と「高原の自然観察−生物どうしのかかわりあい−」で、残念ながら募集期間は終了している。案内が筑波大学公開講座のWebページ(http://www.tsukuba.ac.jp/koho/koukai.htm)に掲載される。生物学類生向けの講演会が毎年著名な生物学者を招いて開かれるほか、不定期に一般参加も可能なやや専門的な内容の講演会が開かれている。

Contributed by Fumiaki Maruo, Received July 29, 2003.

©2003 筑波大学生物学類