つくば生物ジャーナル Tsukuba Journal of Biology (2003) 7: TJB200306TH.

特集:大学説明会

生物学類施設見学の計画・実施および次年度に向けて

濱 健夫 (筑波大学 生物科学系)

 昨年度に引き続いて大学説明会の生物学類施設見学のお世話を、坂本先生および丸尾先生と共に担当しました。まずは、ご協力頂きました学類生のTAの方々、研究室のスタッフおよび大学院生の方々にお礼申し上げます。

 昨年度の説明会の後寄せられた反省点、要望点をふまえて(昨年度の説明会については本誌の創刊号に掲載されていますhttp://www.biol.tsukuba.ac.jp/tjb/Vol1No1/index.html)、今年度は見学者に自由に公開場所を選択して移動して頂く、自由見学方式としました。見学者に対してはおおむね公表であったと考えております。ただし、見学者が単独で施設間を移動することの困難さを中心に問題点がありました。当日行いました反省会は、例年の「打ち上げ」的な会ではなく実質的な「反省会」となり、研究室紹介を担当頂いた教官および大学院生、TAとしてご協力頂いた学類生から、多くの意見が寄せられました。その際の意見も含めて以下にまとめます。

1.実施内容

 学系棟、学類棟、総合研究棟A、遺伝子センター、TARAセンター、陸域環境センターの6施設、15研究室(TARAセンターは1研究室として換算)にご協力頂き、図1に示すようなスケジュールで実施しました。

2.見学者人数

 反省会の際に集計した各研究室(施設)の見学者人数は以下の通りです。

  • 学系棟 D308:20名、D408:20名、D508:30名、F608:11名
  • 学群棟 2D123:42名、2D309:70名、2D308:24名、2D413:40名
  • 総合研究棟A 417:60名、419:30名
  • 遺伝子センター 130名
  • TARAセンター 100名
  • 陸域環境センター 33名

 遺伝子センターおよびTARAセンターの見学者が多くなっており、他施設の研究室の来訪者は比較的少数でした。ただし、施設毎で見ると程良く分散されたのではないかと思います。 全体を合わせると延べ600名の参加者でした。これは事前の参加登録者数が400名強であったことを考えると、1人あたり1.5ヶ所しか見学していないことになります。

3.次年度に向けて

 反省会で多くの方から寄せられたご意見と私の個人的な意見を以下に示します。

3−1.公開方式

・本年度始めて実施した自由見学方式は、参加者にはおおむね好評でした。400名以上の参加者に同時に見学してもらう場合には、今回程度の公開数が適当であろうと思われます。また、説明する側にとっても、内容に興味を持つ見学者のみが集まるのは、好ましい事であったと思われます。

・見学者数は数字上遺伝子センターとTARAセンターが多く、他施設の研究室が少ない傾向でした。しかし、施設毎で考えますとうまく分散されたと言って良いのではないでしょうか。また、遺伝子およびTARAセンターの公開が、複数の研究室を巡回する方式であったのに対し、他施設では1公開場所で30分の説明あるいは体験を行う方式でしたので、これらの研究室では比較的少数の方が好ましかったと思われます。

・配布された地図を基にして、短時間で施設を移動することは、始めて筑波大学を訪れた学生にとっては、困難なことのようでした。自由見学方式をとる場合は、なるべく移動距離を少なくし、見学者の便宜を図る必要性があると思われます。特に、見学者が単独で移動することとなった学系棟、学群棟および総合研究棟に関連する公開は、場所の設定等を考慮する必要を感じます。

・実施時間を各施設で合わせることを基本に行いましたが、移動に時間がかかる等の理由により、途中から参加する学生が多く見られた様です。研究室によっては、そのグループに新たな説明者をあてる事が必要になるなど、混乱を招く原因となりました。移動時間を長めに(少なくとも15分)とる必要があったようです。

・研究室のTAの方との連絡を指導教官の方を通して行いましたが、事前に準備会等を設定して、意志疎通を図っておく必要がありました。特に、どこまでを学類TAを含む学類側でカバーし、どこまでを研究室側が責任を持つのか、が明確では無かったようです。

・学系棟などの施設内を見学者が自由に行き来することで、実験器具等で不慮の事故が生ずることを懸念するご意見を事前に頂き、教官等に対して文章等で対処のお願いを流しました。幸いにして事故等の話は届いておりませんが、この点は十分に配慮する必要があると思います。

・参加者は必ずしも高校3年生が多数ではなく、相当数の1・2年生が含まれているようです。両者の見学に対する意識の違いは大きいでしょうから、両者に対応したコース設定が必要かもしれません。

・本年度行った自由見学方式は見学者側から見るとより理想的な形態であると考えられますが、スムーズに実施するためには、事前の準備、当日の人員等について、これまでの体制、予算では限界があると思われます。

3−2.案内所

・総合案内所を含め、案内所を4ヶ所設けましたが、施設の入り口に設置した遺伝子センターなどを除いて、有効に機能しませんでした。そもそも今回のように見学者が広範囲に分散してしまう場合には、あえて施設毎に案内所を設ける必要は無かったとも思えます。

・相談等を受け付ける総合案内所には、人数はさほど多くは無かったものの、入試制度(特にAC入試)に関する質問者はとぎれることなく続いていました。相談を受け付ける部屋の設定は今後も必要と思われます。

3−3.TA関係

・学類で雇用するTAの学生さんには、説明会当日の案内等の作業に加え、事前に1日以上の作業をお願いしてきています。謝金として支払われるのは、当日分のみであり、他の作業は実質的には彼らのボランティアとなっております。このため、依頼できる作業は限られたものにならざるを得ません。今回の見学で重要な資料となった地図についても、1日の作業で完了できなかったため、TAの方に持ち帰って作業をお願いすることになりました。限られた謝金では、それを越えた作業をお願いするわけには行きません(現在はそれをしているのですが)。十分な準備を行うためには、その作業量に見合った謝金を準備しておく必要だと思います。

・TAを含めた最初の準備会は、1学期の定期試験が終わり夏休みに入ってから開かれています。この日程ですと、作業は夏休み中とならざるを得ず、また帰省中の学生さんも多いため、実施に向けた全体打ち合わせは、説明会当日の朝に設定せざるを得ません。また、帰省先から作業のため、あるいは説明会のために旅費を使って大学に来ている学生さんも多くいらっしゃいます。これらの問題を解消しようとすると、TAの募集等の日程を半月ほど早め、学生さんが帰省する前に準備を終える事が必要になります(この場合は、実施計画も半月早く立てて置かなくてはいけませんが)。

3−4.説明会全体

・今後の法人化を考えると、HPの充実などを通して、説明会をよりアピールして行く必要があると思われます。

Contributed by Takeo Hama, Received August 26, 2003.

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