つくば生物ジャーナル Tsukuba Journal of Biology (2003) 7: TJB200307KI.

特集:大学説明会

これがあるからやめられない…?!

石川 香 (筑波大学 生物学類4年)

 今年も大学説明会のシーズンがやってきた。

 「あぁ、もうそんな季節か」と大学説明会で季節を感じるようになってしまった自分に気付き、ちょっとため息が出た。毎年この時期の恒例行事となっている大学説明会にスタッフとして参加するのは、今年が3回目である。毎年恒例の行事ではあるが、その内容も毎年同じ、という訳ではない。3年連続で参加してみるとよく判るが、毎年前年度の反省を活かして少しずつ手を加え、趣向を凝らし、より良いものを目指して実施されている(昨年の説明会については、TJB Vol.1 No.1 2002年9月 創刊号の『特集:大学説明会』参照)。 今回の説明会で最も大きく変わった点は、14:00以降の施設見学について特定の見学コースを設けずに、参加者に自由に見学先を選んでもらうようにした点である。昨年まではだいたい建物ごとに大まかな見学コースを設け、時間で区切ってTAが次の場所へ誘導するというスタイルだった。このスタイルは、見学者が迷うことなく漏れなく複数の見学先を廻ることができるという点で意義があるのだが、あまり興味のない場所にもほぼ強制的に連れて行かれる可能性があるとか、見たい施設が異なる建物にまたがっていた場合にどちらかを諦めなければならない、といったジレンマがあった。そこである程度の混乱を予想した上で、敢えて見学コースによる縛りをなくし、見学者に自由に廻ってもらうというスタイルを試したのだった。 私はTARAセンターへの誘導を主に担当したので、それを通しての反省点をいくつか挙げてみたいと思う。

 まずは人数についてである。TARAセンターは説明を行うセミナー室の収容量や紹介する実験室の広さから考えて、1回の説明につき50人が限界とされていた。そのため、はじめにTARAセンターの見学を希望する人を募った時に頭数を数え、50人になったところで打ち切って誘導を開始したはずだった。ところが、打ち切った後に集まってきた参加者が、出発してからわらわらと列の最後尾について、最終的に50人を大幅に上回る人数が誘導されてしまった。このため、センターやTARA説明担当のスタッフの方々が臨時にスリッパや椅子を追加するといった対応に追われたり、施設見学に支障が出たりして、迷惑をかけてしまった。この点は、誘導時に先頭に立つスタッフと列の最後尾についてしんがり役になるスタッフというように誘導係が分担すれば防げたかもしれない手落ちであり、反省している。

 次に、案内所について。TARAセンターは2回の説明会を開いており、2回目に参加する人は「総合案内所」に時間までに集まることになっていた。ところが、どうも案内所の場所が判りにくかったらしく、思ったほど人が集まらなかった。見学先を自由に選べる分、参加者の行動範囲が広がって迷う人も増えてしまったようである。自由な行動にするのなら、誰もが判るような明確な場所に案内所を設ける必要があると感じた。

 説明会終了後に行われた反省会では、この他にも多くの改善すべき点が提案された。だが、改善点が多く見出されたからといって今回の説明会が失敗だったとは思っていない。少なくとも私が誘導した参加者の様子を見る限り、今回の説明会に対する満足度はかなり高いのではないかと感じた。例年説明会全体の律速段階となっている大学会館から学類説明会会場への誘導も、他の学類よりずっとスムーズだった。午前及び午後の初めになされた様々な説明も、参加者はかなり真剣に耳を傾けていたように思う。何より、今回の説明会を通じて「絶対に生物学類を目指します」と言ってくれた参加者が複数いたということが、大きな成果である。今回の説明会を支えてくれた学生スタッフの中にも、過去の説明会に参加してそれが生物学類を目指す直接的なきっかけになったと話してくれた人がいた。説明会に携わってきた者としては、こういった参加者や学生の存在が何よりも大きな原動力である。

 今回その成果を目の当たりにした学生スタッフには、是非とも来年度も参加していただきたい。そして先生方と協力しながら今回挙げられた反省点を活かしつつ、来年度はさらに多くの「絶対に生物学類を目指します」が聞けるように、より良いものを作り上げて欲しい。

 ――とかいいつつ、来年もちゃっかりスタッフとして参加していたりして。昨年もこのTJBの創刊号に似たようなことを書いたが、なんだかんだ言って、私は結構この行事が好きらしい[1]。参加者の「絶対に生物学類を目指します」。これがあるから、大学説明会はやめられない?!

引用文献(というほどたいそうなものではない)
[1] Tsukuba Journal of Biology (2002) 1,74-75

Communicated by Fumiaki Maruo, Received August 1, 2003.

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