つくば生物ジャーナル Tsukuba Journal of Biology (2003) 7: TJB200307TS.

特集:大学説明会

マンチェスター大学留学体験記

坂下 俊秀 (筑波大学 生物学類4年)

   

 私は去年の9月から今年の6月までイギリスのマンチェスター大学に留学してきまし た。マンチェスターはイギリス第三の都市で、都会でありつつも非常に美しい町並み を有し、大学も、建築様式が美しいだけでなく、レベルの高い教育を施している、と ても恵まれた環境でした。

 私は、約10ヶ月間研究室に参加し、免疫学の、特に臓器移植における血液の拒絶反 応に関する研究に携わることができました。初めは、英語はもとより、すべてが新し いことだったので、不安の多い毎日でしたが、イギリス人の女性がチューターとし て、マンツーマンで実験の指導をしてくれ、また、生活面でもいろいろと相談に乗っ ていただくことができ、充実した研究生活を送ることができました。さらに、この研 究室は全30人中、約10人ほどは海外から来ている研究者であるという国際的な雰 囲気でしたので、私自身すぐに溶け込むことができました。研究室では、毎週サッ カーをしたり、パーティをしたり、研究以外のイベントも結構あったりして、楽し かったです。

 宿舎は、10人でひとつのフラットを共有する形で、10人中、7人が留学生で、イ ンド、イタリア、シンガポール、モーリシアス、などからの学生でした。宿舎の庭に は時々リスが来たり、目の前には新しい室内プールがあったり、とてもすばらしい環 境でしたが、何よりも普段からフラットメイトと一緒に夕飯を食べたり、テレビを見 たり、そういう普通の生活を共有することができたことが、一番の思い出です。お互 いに違うバックグラウンド持つだけでなく、それぞれの国の事情を抱えていたりし て、何気ない会話の中にも学ぶことがたくさんありました。例えば、一番仲良くなっ たシンガポール人の青年は、シンガポールで一流の日系企業を辞めてマンチェスター で勉強し、祖国に帰ってから自分で会社を立ち上げると言っていましたが、そういっ た高い志を持った学生とめぐり合えたことはとても貴重でした。フラットメイト以外 にも、留学生の友達ができ、遊びに行ったり、パーティをしたり、時には深夜まで話 し込んでしまうこともありました。世界のなかに、自分と同じような若者がたくさん いて、みんなそれぞれの人生を送っているという実感は、とても貴重なものだと思っ ています。

 始めは、普段の生活も、研究室生活も、わからないことだらけでしたし、受講してい た講義の勉強も大変でした。しかし、少しずつ英語も上達し、生活にもなれ、新しい 友達もでき、マンチェスターで過ごす時間に比例して生活の楽しさも増していったよ うな気がします。留学期間の終わりには、研究レポートを書き上げてから、一ヶ月か けてヨーロッパ数カ国を廻る旅をすることもできました。

 私は、大学一年のときにマンチェスター大学に留学しようと決意して以来、それを目 標にして、本当に充実した大学生活を送ることができました。この留学は生まれて初 めて自分で決意し、自分の力で達成した経験だと思います。 何年かしてこの留学を振り返ったとき、そのほとんどの出来事は記憶に残っていない かもしれません。しかし、何もなかった自分が、なんとか挑戦していった、というそ の勇気だけは忘れないと思います。

 高校生の皆さんの中で、すでに留学を決意されている方はそれほどはいないと思いま すが、私自身、まさか自分がこの生物学類に入って留学をするとは夢にも思っていま せんでした。そして、留学を通して、こんなにも充実した大学生活を送ることができ るとは、想像もしていませんでした。是非、生物学類に来て、この留学プログラムに 挑戦してみてください。

Communicated by Yoshihiro Shiraiwa, Received August 11, 2003.

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