つくば生物ジャーナル Tsukuba Journal of Biology (2004) 3: TJB200403MU.

特集:卒業・退官

思い出話

梅津 正博 (筑波大学 生物学類 4年)

この四年間の大学生活で私が学んだことを羅列してみる。

 「自分は何も知らないということ」「人間はとても不思議な存在だということ」「生きるということは大変だということ」「人は見かけによらないこと」「日本住血吸虫感染マウスにおけるパラミオシン特異的IgEモノクローナル抗体投与による肉芽腫形成の抑制」「酒は飲んでも飲まれるな、ということ」などなど。

 大学は自由だった。仲間がいた。金はなかったが、時間があった。いろいろ考えた。話した。人生宗教政治経済社会文学生物恋愛服飾・・・。ずいぶんみんないろんなことを考えているのだなと思った。授業で得る知識は面白かった。しかし、それ以上に仲間達との語らいは刺激的だった。同年代の学生だけでなく、社会人や年配の方とも語り合った。いろんな人と話すことで、自分の偏狭さに気付くことが出来た。

 また、自分とも語った。「大学は、大学に行けなかった人たちのためにある」私が尊敬してやまない方の言葉である。なぜ自分は勉強するのか。何のために。己の利益・出世のために学ぶのか。自分の使命はなんだろう。いろいろと考えた。そして出た結論のようなものは「人のためになり、かつ自分でも興味のある研究をする」である。あくまでこれは僕個人の考え方である。こういうモチベーションがあっても良いのではないかと思う。

 ともあれ、バイトをして人と話して大いに酒を飲んだ四年間であった。酒はずいぶん飲んでしまった。いつのまにかビールとウイスキーを好むようになってしまった。一年次、ビールを苦い苦いといって騒いでいたあの頃。

 レポートを手書きで仕上げていたあの頃。「A」を取ることを至上の価値としていたあの頃。愚かしいようで輝かしい思い出たち。後悔があるとすれば、もっと人と深い話がしたかったこと。もっと本を読むべきだったこと。ともあれ、この四年間で着実に私は私になった。

 寝床につくときに、翌朝起きることを楽しみにしている人は幸福である。
                                   (ヒルティ)

Communicated by Fumiaki Maruo, Received March 23, 2004.

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