単葉と複葉
Simple leaf & compound leaf

葉にはさまざまな形態のものがあり、マメ科やカタバミ科、クルミ科、トチノキ科、セリ科などでは葉が複数の部分に分かれているものが多い。このような葉を複葉 (compound leaf) とよぶ。またシダ類のほとんどや裸子植物のソテツ類も複葉をもつ。

単葉 (simple leaf)
葉身が分割せず、1つである葉。イロハカエデ (ムクロジ科) のように葉身が深く切れ込んでいても (分裂葉 lobed leaf)、全裂していなければ単葉である。
複葉 (compound leaf)
葉身が全裂しており、2個以上の部分に分かれている葉。下記のような要素からなる (必ず全ての要素をもつわけではない)。進化的にはシダ類では複葉が原始的であると考えられ、種子植物では単葉から複葉への進化が何回も起こったと思われる。生理・生態的には、単葉よりも複葉の方が同じ葉面積の葉を展開・落葉させるのにエネルギー消費が少なくてすむと考えられているらしい。
小葉 (leaflet)
複葉を構成する扁平な葉の部分。頂端の小葉を頂小葉 (terminal leaflet)、両側の小葉を側小葉 (lateral leaflet) とよぶ。
葉軸 (rachis)
小葉をつける葉の中心軸。
小葉柄 (petiolule)
小葉をつける柄。
小托葉 (stipel, stipellum)
小葉につく托葉 (状の構造)。

単葉か複葉かは種によって決まっているが、中にはツタのように同一個体が単葉と複葉の両方をもつものもある。またツルマメやクズ (マメ科) では、個体発生の初期の葉 (第1葉、第2葉) は単葉であり、その後、複葉を形成する。

複葉のタイプ

三出複葉 (ternate leaf, ternately compound leaf)
3個の小葉からなる複葉。
三出掌状複葉 (palmately trifoliolate leaf)
葉柄の先端に3個の小葉が直接つくもの。クサボタン、ニリンソウ (キンポウゲ科)、ミツバアケビ (アケビ科)、ミツバツチグリ、オランダイチゴ属 (バラ科)、シロツメクサ属 (マメ科)、カタバミ属 (カタバミ科)、ミツバ属 (セリ科) などに見られる。
三出羽状複葉 (pinnately trifoliolate leaf)
葉軸が伸長し、その先端に頂小葉がつき、側方に一対の側小葉がつくもの。ウマゴヤシ属、ノアズキ属、ヌスビトハギ属、ハギ属、ヤブマメ属、クズなどマメ科に見られる。
掌状複葉 (palmate leaf)
葉柄の先に3個以上の小葉が直接つく複葉。小葉が3個の場合は三出掌状複葉 (上述)、5個の場合は五出掌状複葉 (pentatrinate leaf)、5個より多い場合は一括して多出掌状複葉 (multiple palmate leaf) とよぶ。オウレン属 (キンポウゲ科)、アケビ属 (アケビ科)、ウコギ科、トチノキ属 (トチノキ科)、オヘビイチゴ (バラ科) などに見られる。
羽状複葉 (pinnate leaf)
葉軸が伸びて3個以上の小葉がつく複葉。小葉が3個の場合は三出羽状複葉 (上述) という。
奇数羽状複葉 (impari-pinnate leaf)
葉軸の先端に頂小葉がある羽状複葉。ふつう小葉数は奇数になるが、側小葉の配列が不規則で全体で偶数になる場合もある。最もふつうに見られる複葉で、クルミ科、ナナカマド類、ワレモコウ類 (バラ科)、ゲンゲ属、フジ属 (マメ科)、サンショウ属 (ミカン科)、ニワトコ (スイカズラ科) などに見られる。側小葉の大きさが著しく不均一な場合、不整奇数羽状複葉 (interruptedly pinnate leaf) といい、キンミズヒキやダイコンソウ (バラ科) などに見られる。また頂小葉が極端に大きなものは頭大羽状複葉 (lyrately pinnate leaf) とよばれ、ダイコンやオオタネツケバナ (アブラナ科) に見られる。
巻きひげ羽状複葉 (cirrhiferous pinnate leaf)
頂小葉が巻きひげになっている複葉。ソラマメ属やレンリソウ属 (マメ科) に見られる。
偶数羽状複葉 (pari-pinnate leaf)
頂小葉を欠く羽状複葉。ふつう小葉数は偶数になる。ハマビシ、カワラツメケイ、クサネム (マメ科) などに見られる。ナンテンハギでは小葉が2個しかない。
鳥足状複葉 (pedately compound leaf)
掌状複葉の最下部の側小葉の柄からさらに小葉柄がでる複葉。小葉柄の分岐が鳥足状になっている。ヤブガラシ (ブドウ科) やアマチャヅル (ウリ科)、ゴヨウイチゴ (バラ科) などに見られる。
単身複葉 (unifoliolate compound leaf)
見た目は単葉だが、葉柄に関節をもつものは小葉が1個になった複葉と考えられ、単身複葉とよばれる。メギ属 (メギ科) やミカン属 (ミカン科) などに見られる。それぞれヒイラギナンテン属 (メギ科)、キハダ属 (ミカン科) と奇数羽状複葉をもつ近縁属が存在する。

再複葉

三出複葉羽状複葉では、小葉がさらに複葉になっているものがある。このような状態を再複葉 (decompound leaf) という。複葉化の回数によって二回複葉、三回複葉....とよばれる。また掌状羽状複葉のように異なる形式が組み合わさったものもある。

二回奇数羽状複葉 (biimpari-pinnate leaf)
奇数羽状複葉で小葉がさらに全裂して奇数羽状複葉になっているもの。タラノキやウド (ウコギ科) に見られる。
三回奇数羽状複葉 (triimpari-pinnate leaf)
奇数羽状複葉で小葉が2回奇数羽状複葉になっているもの。ナンテン (メギ科) やセンダン (センダン科) に見られる。
二回偶数羽状複葉 (bipari-pinnate leaf)
偶数羽状複葉で小葉がさらに全裂して偶数羽状複葉になっているもの。ネムノキやサイカチ、オジギソウ (マメ科) に見られる。
掌状羽状複葉 (palmate-pinnate leaf)
掌状複葉羽状複葉が組み合わさっている複葉。小葉柄が三出状に繰り返し出る三出羽状複葉 (ternate-pinnate leaf) が最もふつうに見られる (セリ科など)。さらに小葉柄が繰り返し分岐する二回三出羽状複葉 (biternate-pinnate leaf) はシャク、ヤブニンジン (セリ科) に見られ、三回三出羽状複葉 (triternate-pinnate leaf) はオヤブジラミ、ハマボウフウ (セリ科)、タラノキ、ウド (ウコギ科) に見られる。

シダ類の複葉

シダ類 (ウラボシ綱、リュウビンタイ綱) では葉が羽状複葉となるのがふつうであり、単葉のものはオオタニワタリやノキシノブなど一部に限られる。シダ類の複葉の場合、小葉羽片 (pinna) とよび、再複葉している場合は順に一次羽片、二次羽片、三次羽片・・・という。また最終裂片は特に小羽片 (pinnule) とよばれる。クサソテツのように頂羽片が明瞭で奇数羽状複葉とよべるものもあるが、ふつう羽片は先端にいくに従って小さくなり頂羽片 (頂小葉) とよべるものは不明瞭である。シダ類の複葉ではクサソテツやシシガシラ、チャセンシダのような1回羽状複葉から、ゼンマイやオシダ、ベニシダ、リュウビンタイのような2回羽状複葉、コバノイシカグマのような3回羽状複葉、さらにオオフジシダ属に見られる5回羽状複葉まで知られる。