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動物の発生を比較して、進化を探る



多細胞動物の多様な「形態」が、どのような歴史を経て、進化してきたのかについて、研究しています。多細胞動物は、進化の歴史の中で、数多くの新しい形質を獲得してきました。たとえば、私たち脊椎動物に至る道筋では、まず脊索や神経管を獲得し、オタマジャクシ型の体制を獲得し、その後、脳、骨、神経堤細胞などを獲得、発達させてきました。また、アサリなどの二枚貝は、貝殻を2枚に分けると同時に、貝殻を閉じるための筋肉を新たに獲得して、ユニークな体制を生み出しました。


動物は毎世代、受精卵という単一の細胞から、「発生」というプロセスを経て、「形態」を作り上げています。動物の多様な「形態」は、この「発生」プロセスを変更することで、成し遂げられてきました。先に述べた、進化の過程で生み出されてきた特徴も、特定の発生の段階で作り出されます。新しい形態を獲得した動物と獲得していない動物の、まさにその発生段階を比較することで、新しい形態の進化の歴史を見ることができます。


発生の比較から進化を理解するために、もう一つ手がかりがあります。全ての多細胞動物は、共通の遺伝子セットを使いながら、発生をコントロールしています。たとえば、脊椎動物の脊椎骨を作るための遺伝子の多くは、無脊椎動物にもあります。つまり、形態の進化では、その都度新しい遺伝子を作ってきた訳ではなく、共通な遺伝子を、異なる方法で使うことで、多様性を生み出してきたのです。発生過程を変更して、新しい性質を生み出すとき、そこでは、どのように遺伝子の働きが変わったのでしょうか。


多細胞動物は、おおよそ1-3万個の遺伝子をもっています。その数は、多細胞動物の複雑な体を作り上げるには、十分ではないのか、多くの遺伝子が、2つ以上の役割を持つ、すなわち多面的な機能をもっています。たとえば、私たちの脊椎骨を作るために働いているPax1という遺伝子は、鰓の発生にも必須な役割を果たしています。多細胞動物の多様な形態の進化は、遺伝子が多面的な役割を獲得してきた歴史とも言えます。


進化とは、遺伝する形質が、世代を経る中で変化していく現象です。動物は、世代を超えて受け継がれる遺伝子を読み取ることで、毎世代受精卵から「形態」を作り上げます。したがって、形態の進化は、遺伝子の書き換えというプロセスを経て成し遂げられます。ところが、形態を作り上げるプロセスには、さまざまな遺伝子が関わっているため、一つの遺伝子の変化が形態にもたらす影響は限定的です。また逆に、一つの遺伝子も多面的な機能を持つことから、一つの遺伝子の変化は、複数の形態に影響が及びます。遺伝子と形態の関係は複雑です。動物の形態進化をもたらした遺伝子の進化は、どのようなものだったのでしょう。そこに何らかの規則性があるのかどうか、私たちは考えています。


そもそもなぜ生物は多細胞体制を獲得したのでしょう。単細胞生物、あるいは原核生物のままの方が、生存には有利ではなかったのでしょうか。なぜ、生物の進化のプロセスは、数多くの新しい形質を生み出すなど、これほどまでに創造的だったのでしょう。自然選択による進化という概念だけでは説明できない問題がまだ残っています。私たちは、遺伝子の進化と形態の進化の関係、そこにある規則性に、この創造性の理解につながる何かを求めています。遺伝子を闇雲に増やすことなく、すでにある遺伝子を多面的に使い回してきた、その束縛が創造性につながった可能性があると考え始めています。


  


現在の研究テーマ
Project 1. 脊索動物の進化 〜脊索の獲得から脊椎動物への進化〜

Key words: 脊椎骨; 脊索; 咽頭; 鰓; 軟骨; 神経堤
Animals: ニワトリ; メダカ; カワヤツメ; ナメクジウオ; カタユウレイボヤ


Project 2. 軟体動物のボディプラン進化の発生学的基盤を探る

Key words: 二枚貝; カサガイ; 殻; フタ; 筋肉; 卵割パターン
Animals: ムラサキインコガイ; クサイロアオガイ; ケガキ


Project 3. 棘皮動物幼生の進化 〜骨片の獲得と収斂進化〜

Key words: 幼生骨片; 収斂進化; プルテウス幼生; ビピンナリア幼生
Animals: イトマキヒトデ; ヨツアナカシパン


Project 4. ギボシムシから新口動物の進化を探る 

Key words: 新口動物; 変態; 神経の進化
Animals: シモダギボシムシ


Project XX. ワレカラの形態進化の謎を解く

Key words: 体節; 付属肢; 収斂進化; 先祖返り
Animals: トゲワレカラ


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