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Evolution mechanism of Molluscan bodyplan
軟体動物のボディプラン進化の発生学的基盤を探る
殻は軟体動物の持つ特徴的形質です.殻の形態は、約10万種という多様性をほこる軟体動物の各系統で様々な進化を遂げ,
その中でも二枚貝綱は、背側に「二枚目の殻」という新奇形質を獲得した分類群です.それでは,このような殻形態の進化を
引き起こした発生基盤の変更とはどのようなものだったのでしょうか?
我々は,「二枚目の殻」という進化的新奇性を創出したメカニズムを解明するため,二枚貝(ムラサキインコガイ・ケガキ)と,
殻が一枚の軟体動物である腹足類の殻形成機構の比較を試みています.その中で,二枚貝特有の発生パターンがいくつか確認されました.
@∞型の貝殻腺
軟体動物の殻は,トロコフォア幼生期に形成される「貝殻腺」と呼ばれる領域から分泌されます.この貝殻腺の形が,腹足類胚では○型
であることが知られていましたが、二枚貝胚では「∞型」であることが電子顕微鏡を用いた観察によって明らかになりました.
A割球Xの卵割パターン
二枚貝胚では初期の卵割において,「X」と呼ばれる巨大な割球が生じます.このXは他の割球に見られるらせん卵割は行わず,
独立した不等分裂パターンを示した後,左右相称分裂を行い,「二つのX」になります.この他の軟体動物には見られない「二つのX」
が「∞型の貝殻腺」の形成に寄与している可能性が示唆されています.事実,このことを支持するように「Xが将来,貝殻腺へと分化する」
という記載も存在します(Lilie,1895).
B異なる遺伝子発現パターン
腹足類において,貝殻腺の形成への関与が示唆されているいくつかの遺伝子について,発現解析を行ったところ,
ケガキ胚で異なる遺伝子発現パターンを示すものが存在しました.現在,これらの遺伝子について阻害剤などを用いて機能解析を進めています.
○最後に・・・
軟体動物のEVO-DEVOにおいて,各分類群の初期発生パターンを明らかにすることは欠かすことのできないピースであるといえます.
しかしながら,軟体動物の初期発生は,容易に胚が手に入るにもかかわらず、その胚の小ささゆえに長きにわたり発生学者のアプローチを拒んできました.
それゆえ軟体動物の初期発生はまさに「発見の宝箱」であり,そこには軟体動物という非常に多様化したグループの進化という,
圧倒的な質量が秘められていると確信し、研究を展開しています.
Next project
腹足類における進化的革新〜もう1枚の貝殻?フタの獲得機構の解明〜
もうすぐ公開!お楽しみに。