根・導管液・導管の機能

植物の体は乾いているように見えますが、決してそんなことはありません。ヘチマ水を採ったことがありますか?そう、ヘチマ水(=導管液)こそは植物の体液なのです。

この導管の中を流れる液には、栄養となる無機塩類に加え、ホルモンタンパク質糖質などが含まれています。これらの有機物質は、根が作り出し、導管の中へ分泌したもので、ヘチマコロンの成分としてお肌をきれいにするのに加えて、植物体、特に地上部器官の生活に必須なものです。

植物の根が、導管液に含まれるタンパク質や生理活性物質などの諸物質を通して、どの様に植物体の機能や発生に関わっているのかを明らかにするのが、この研究の一つの目的です。また反対に、地上部器官の受けた環境情報や生理状態などの情報がどのように根に伝えられ、導管液物質の産生や根の機能を制御するのかも明らかにしていきたいテーマの一つです。研究材料としては、主にキュウリやカボチャなどのウリ科植物やシロイヌナズナなどのアブラナ科植物を用いています。


導管液とは:
 植物の導管(道管)の中を流れる液体。維管束の構成要素の一つである導管は、プログラム細胞死した管状要素細胞の殻(細胞壁)が連なった管で、維管束内の柔組織細胞に囲まれた細胞外空間(アポプラスト)である。導管液の成分は、根において土壌から吸収された水とミネラル(無機イオン類)に加え、根の細胞で合成・分泌されたアミノ酸(グルタミン)、植物ホルモン(ゼアチンリボシド、アブシジン酸)、タンパク質、糖質などの有機物質から成る。その流れは、日中は蒸散によって、夜間は根圧(維管束内外のミネラル濃度差(浸透圧差)を埋めるために生じる維管束内に向かう水の圧力)によって根から地上部器官へと向かう。

篩管液とは:
 植物の篩管(師管)中の液体。維管束の構成要素の一つである篩管は、核を失った篩要素細胞が篩板を通して連なった連続した原形質からなる管である。篩管液の成分は、タンパク質や高濃度のショ糖、アミノ酸(グルタミン)などを含む原形質から成り、それらは原形質連絡を通して伴細胞から供給される。その流れは、同化産物(ショ糖)の篩管内の部位(シンク、ソース)による濃度差によって、ソース器官(成葉)からシンク器官(根、果実、芽)へと向かう。





これらの研究に関する我々の研究成果を発表した文献とその要旨をご覧になりたい方はここをクリックして下さい。




大学院生等の研究テーマ

櫻井正人
 生命環境科学研究科

 生命共存科学専攻

 5年

 地上部器官における細胞分裂/伸長に対するカボチャ根導管液生理活性物質の作用の解析
福田恵之
 生命環境科学研究科

 生命共存科学専攻

 5年

 キュウリ根導管液タンパク質の動態と機能の解析
佐藤祐子
 生命環境科学研究科

 生命共存科学専攻

 4年

 導管液糖質(ミオイノシトール)に関する分子生物学的・生理学的解析
佐川啓子
 生命環境科学研究科

 生命共存科学専攻

 2年

 根導管液に含まれるアラビノガラクタンペプチドの機能解析
猪野耕平
 生命環境科学研究科

 生命共存科学専攻

 2年

 土壌生物に対する根の感染防御機構に関する研究
杉井英樹
 生命環境科学研究科

 生命共存科学専攻

 1年

 導管液レクチンの遺伝子解析
奥田麻子
 生物学類4年  ブロッコリー根導管液のアミノ酸・有機酸の産生と機能に関する研究

佐藤忍研究室ホームページへ戻る