つくば生物ジャーナル Tsukuba Journal of Biology (2002) 1: 86-87.

特集:大学説明会

施設見学:電子顕微鏡室コース

丸尾 文昭 (筑波大学 生物科学系)

 電子顕微鏡室には、電子線やレーザー光源を利用した様々なタイプの顕微鏡が設置されていて、研究教育に活用されている。生物学類の専門実験でも細胞学実験などでたっぷりと利用体験ができる。大学説明会の施設見学コー スでは、電子顕微鏡や共焦点レーザー顕微鏡を使って研究対象を実際に目で見るための工夫とそこから得られる莫大な情報の重要性を紹介するとともに、肉眼と異なる媒体を使って見える世界を覗いて感じる喜びを少しでも体験 してもらえるように工夫した。

 それぞれの顕微鏡は、2,3名ずつ見学・体験してもらうため、待っている間にも充実した時間を過ごしてもらえるように冷房の効いた待合室を設けた。ここには電子顕微鏡や共焦点レーザー顕微鏡を利用した研究を紹介する ポスターを展示して、お茶を飲みながら大学院生や教官と自由に話ができる場とした。研究の話に限らず、生物学のどの分野に興味があるかとか、進路や受験勉強のことなど広範囲の話に花が咲いていた。高校3年生だけでなく1年生の参加もあったので、個別に相手の状況に応じて ゆっくりと話せる余裕があったのは好ましいことであったと思う。

 今年の電子顕微鏡室コースの参加者は、15名と例年より少なかったため、予定の2倍以上の時間をかけて、実際に操作してみるなど、じっくりと3種類の顕微鏡を体験してもらった。ミクロの世界の魅力を各人各様に感じ取ってもらえたことだろう。

 電子顕微鏡室の施設見学はこれまでの大学説明会で毎年実施しているので、常に反省点を改善して現在に至っている。今年、特に気を配った点は、グループ分けをする時、宿舎見学に行く人や学校の送迎バスの都合で早めに帰らね ばならない人に最初の顕微鏡体験グループに入ってもらったことである。待合室での質疑応答は時間の自由が利く。 帰りの時間の制約がない人には、好きなだけ心行くまでいてもらった。結局、最後の人は予定表の終了時刻を1時間以上過ぎていただろうか。

 帰りがけに、「受験勉強を頑張ろうという気になった」、「実際に体験して感動した。生物学類に絶対入りたいと思った。」という、うれしい声を聞くことができた。ぜひ、生物学類に入学して、好きなだけ心行くまで生き物と対峙して欲しいものだ。


図1.走査型電子顕微鏡

電子線の反射を利用して、「もの」の表面の微細な構造を見ることができる。 藻類のサンプルを観察した。


図2.透過型電子顕微鏡

電子線の透過を利用して、「もの」の内部の微細な構造を見ることができる。 電子線が通りやすいように、観察し たいものを超薄切片に調整する。 藻類のサンプルを観察した。


図3.共焦点レーザー顕微鏡

レーザー光線を利用して、普通の光学顕微鏡よりも高解像度で「もの」を 観察することができ、容易に高精度の3次元像が得られる。 遺伝子発現の研究にも使われている。 ショウジョウバエの脳のサンプルを観察した。

Contributed by Fumiaki Maruo, Received August 15, 2002.

©2002 筑波大学生物学類