つくば生物ジャーナル Tsukuba Journal of Biology (2002) 1: 70.

特集:大学説明会

菅平高原実験センター

町田 龍一郎 (筑波大学 生物科学系)

 大学説明会で菅平高原実験センターの紹介を行いました。下田臨海実験センターとともに紹介の時間が特別に設け られたのは初めてのことです。菅平高原実験センターについてどのくらい的確に語れたかは心配ですが、学類長から の「観光業でも食っていけそうだ」とのお誉め?の言葉もいただきましたし、「筑波大学に入れたら菅平にいきたい」 と、センターに関心を抱かれた高校生の方々もいらしたようで、少しはほっとしています。その時に語ったことを書 きますが、これはとりもなおさず菅平高原実験センターの紹介です。そのようなつもりでお読み下さい。

 菅平高原実験センターは、まもなく創設4分の3世紀になろうとする、生物系山岳実験所です。このような山岳実 験所は、国内に東北大学・九州大学・信州大学などにもありますが、規模・設備・質において国内随一のものであり、 国際的にも屈指の教育・研究施設です。生物科学・地球科学・農学など、自然誌に関わる教育・研究を推進する目的 で発展してきました。 本州のほぼ中央、長野県小県郡真田町の上信越国立公園の一角、標高 1,300 m の地に 35 ha のセンターの構内が広がります。標高差 100 m の谷に広がる渓谷林、さまざまな遷移段階にある植生、実験林、そこには多様な野生動物も生息しています。夏季は冷涼な避暑地であるだけ に、冬季は -30 ℃ 近くにもなる内陸性気候で、本州中部山岳地帯における自然誌に関わる教育・研究には理想的 な立地・環境です。

 3名の教官、5名の事務官・技官からなる態勢で、植物学・微生物学・動物学関連の3研究室があります。セン ターでの研究は国内外で高い評価を得ているものばかりで、植物群落や生態系に関する研究、微生物の生態・分類学 的研究、昆虫類・節足動物の比較発生・形態学的研究が行われています。また地球環境問題の教育にも力を入れてい ます。常時、10名以上の学類・大学院生が宿泊棟に寄宿しながら学習・研究を行っており、筑波大学だけでなく他 大学・機関による各種の実習、セミナーなども開かれます。また、高校生対象の公開講座も毎年行われ、受講生のな かには、一般入試だけでなくACや推薦で筑波大学生物学類へ入学する者が少なくありません。

 このような教育・研究活動を支えるべく、研究設備、実習設備、支援設備も充実しています。DNA配列自動解析 装置、光合成測定システム、ガスクロマトグラフィーシステム、光顕内蔵透過型電子顕微鏡、光顕内蔵走査型電子顕微鏡、研究用万能顕微鏡などの研究設備、また、30〜 50 名の実習に対応できる実習用の顕微鏡、双眼鏡、気象測定装置など。採集や構内の整備のための四輪駆動車やトラクターなどの支援設備などもあります。また、セン ターの気象データはセンター発足以来記録されており、現在は多種の項目にわたって自動的に記録するシステムが完成しています。

 このように菅平高原実験センターは、生物系の山岳実験所として、設備・規模・質のすべてにおいて、国内随一、 国際的にも屈指の施設として誇れるものです。しかし私たちが本当に誇りたいのは、近年の生物学が還元論やテクノ ロジーの推進を重視する中で、生物をあるがままの姿、システムとしてみていくという研究のスタンスを堅持しなが ら、国際的な研究を展開しているということ、そして、センターに学習・研究でおとずれる学生諸君が生物の素晴ら しさに目を輝かし、生物学の面白さを体得されて帰られることです。高校生の皆さん、筑波大学生物学類に入学され たら、ぜひとも菅平高原実験センターにいらっしゃい。私たちと一緒に野外に出て、生物のありのままの姿を観察し ましょう。生物学を選んで、学んで良かったと思えます!

Contributed by Ryuichiro Machida, Received August 20, 2002.

©2002 筑波大学生物学類