つくば生物ジャーナル Tsukuba Journal of Biology (2002) 1: 68-69.

特集:大学説明会

下田臨海実験センター

齊藤 康典 (筑波大学 生物科学系・下田臨海実験センター)

 伊豆半島の先端部(静岡県下田市)に下田臨海実験センターはある、海洋の生物や環境についての教育と研究のための施設である。国立大学理学部系のこの様な臨海施設は全国で19カ所あるが、当センターはこの中でも際だって 立地条件に恵まれている。即ち、周辺海域の汚染が少ない、黒潮の影響で温帯及び亜熱帯系の動植物が豊富、しかもアクセスするのに交通の便が非常に良いなど。むろん設備も充実している。図1からわかるように、青く澄んだ海と白い砂浜が前面に広がる素晴らしい環境にあり、定員30人の調査・採集船「つくば」が研究・教育のサポートをし ている。その他、透過型電子顕微鏡、走査型電子顕微鏡、各種光学顕微鏡、超高速遠心機、冷却高速遠心機、高速液 体クロマトグラフ、超低温冷蔵庫(-80℃)、コールドルーム、屋内飼育水槽、屋外飼育水槽、学内ネットワークに繋 がったLAN等の設備、さらに3食を提供する宿泊施設も備えている。

 センターでの教育活動としては、本学生物学類の植物分類形態学臨海実習、動物分類形態学臨海実習、生態学臨海 実習、動物発生学臨海実習、動物生理学臨海実習、生物学臨海実習や体育センターの集中授業等が行われている。また、大学院生対象と学部生対象の公開臨海実習、高校生対象と現職教員対象の公開講座等を開講している。そして、海洋生物学の発展に考慮して、臨海施設を持たない他大学の臨海実習ために利用の機会を与えている。

 センターでの研究活動は、センター常勤の3教官と常駐の大学院生及び卒研生、そして、センターを利用する外来 研究者によって行われている。常勤3教官の研究室では、現在、次のような研究が行われている。


図1

1)生理学研究室(蔵本教授・センター長)

 海産の節足動物(イセエビやカブトガニ、図2)を用いて、環境への適応機能に注目して研究している。具体的には、外界の光や水温の変化に対処する中枢神経系のニューロンの働き、さらに、心臓・循環機能への影響を調べてい る。


図2

2)生態学研究室(青木講師)

海産小型甲殻類(図3)の生活様式や生活史について研究している。主に、a) 生活の場としている海藻や固着の群体性動物との相互関係について、b) 繁殖生態および子守や集団営巣等の社会行動について、そして、c) 個体群の維持と集団間での個体交流について研究している。


図3

3)発生学研究室(齊藤講師)

 群体性のホヤ(イタボヤ類、図4)を研究材料として、a) 自己・非自己の認識機構の進化(移植免疫の進化)について、b) イタボヤ類の無性生殖のしくみについて、そして、c) 下田周辺に生息するイタボヤ類の分類とイタボヤ各種の系統についても研究している。


図4

 海は生命のふるさとであり、我々が想像できないほど多様な生物が棲んでいる。海洋の生物に興味のある人は、是非、将来下田臨海実験センターに来て勉強して欲しい。

Contributed by Yasunori Saito, Received August 14, 2002.

©2002 筑波大学生物学類