つくば生物ジャーナル Tsukuba Journal of Biology (2003) 2: 156-157.

連続特集:菅平高原実験センター

常駐学生から見た菅平高原実験センター

栗原 祐子 ((有)ハイファリンク研究所)

私は1995年から2003年までの8年間、生物学類の卒研生及び生物科学研究科の大学院生として菅平高原実験センターに常駐し、カビの分類の研究をしていた。本稿ではその経験に基づき、学生が同センターに長期滞在して研究を行なう利点について述べる。

1.良好なフィールドと設備が整った実験室が隣接している。別図に見るように、センターの敷地内とその周辺は多様な自然環境に恵まれており、また、センターには様々な機器が揃っている。そのため、気軽に野外に出かけて、そこで採集した新鮮な試料を即座に実験に用いることができ、作業効率がよい。

2.教官のきめ細かな指導を受けやすい。センターでは指導教官を捕まえて指導を受けるのに苦労しない。毎日あるお茶を飲みながらのディスカッションは、時に他の研究室の教官や院生も交えて行なわれ、様々な意見が聞けて非常にためになる。

3.自分の専門分野以外も広く学べる。センターにある植物・動物・菌類の3研究室の院生は一日中共に生活しており、またこれらの研究室は毎月合同でゼミを行なう。さらに、主に夏には国内外の様々な分野の専門家が多数来訪する。このお陰で、常駐の学生は門前の小僧状態で広範な知識を身に付けることができる。

4.時間的・空間的な余裕がある。学生の人数が少ないので、1人当たりが使用可能な時間・空間が本学に比べて多い。例えばシークエンサーや電子顕微鏡は順番待ち無しで自由に使えるし、卒研生でも実験室と学生居室に机を一つずつ持つことができる。

5. 生活しやすい。夏は高原のサワヤカな気候のために涼しく、冬は全館暖房のお陰で外気温が−20℃になっても中はぬくぬくである。夏と冬は、よそに出かけるのが嫌になるぐらい過ごしやすい。また、野沢菜など信州の特産物を生かした賄いつきで、しかも宿泊費・食事代とも低価格に抑えられている。大変有難いことに、センターの事務官の方々や地元の住人の方々も学生に非常に好意的である。

図1 センター構内の大明神滝と林のようす

 このようにセンターは研究を行なう上で理想的な環境にある。上述の利点の多くは下田臨海実験センターにも当てはまる。学類生の皆さんが実習等でこれらのセンターを訪れる際には、ついでにセンター所属の研究室も覗き、卒業研究の研究室選択時の候補に入れることをお勧めする。

 菅平高原実験センターについての詳細は下記のホームページを参照のこと。

http://www.sugadaira.tsukuba.ac.jp/

図2 菅平高原と菅平高原実験センターの概念図

Communicated by Yuzuru Oguma, Received February 25, 2003.

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