つくば生物ジャーナル Tsukuba Journal of Biology (2004) 3: TJB200403RK.

特集:卒業・退官

1クラ卒業生へ:筑波大生物学類の血はあなたのこころで永遠と流れ動き続ける

神崎 亮平 (筑波大学 生物科学系)

 1クラスのみなさん、ご卒業おめでとうございます。1クラスはもとより、学年全員無事の卒業。学類長のことばをかりれば「奇跡の学年」とのことですが、ここで少し水をさすことにします。結果よければすべてよしではなく、卒業までの過程をもう一度振り返って、これを機に今一度気を引き締め、みずからの4年間を見つめなおすこともしてほしいと思います。

 さて、わたしにはこの1クラが担任としての最初のクラスでした。担任がかかわるはじめのクラスがフレッシュマンセミナー。それを担当しながら、ふと、私が筑波大に入学した当時のことを思い起こしました。確か、われわれ生物学類2期生のときには、赤城青年の家で宿泊オリエンテーションがあり、生物資源(当時は農林)学類と人間学類も一緒にオリエンテーションを行ったと記憶しています。すでに30年近くまえのことなので正確さに欠けますが、各学類でなにか出し物をしましょうという話があって、生物学類では、わたしがリードして次のような誓いの言葉を全員で唱和しました。暗い部屋の中のわずかな光の中で、「1つ、われわれ生物学類は、生物を愛し、世界と人類の幸せのために貢献します、、、、1つ、われわれ生物学類は、学業を怠ることなく、、、、」と、3つだったかの誓いの言葉を80名全員で唱和した。このときのうつくしく奏でられた唱和の空気に、皆感動しました。そして、われわれは生物学類のパイオニアであり、われわれから学類ははじまり、そして続いていくという強い意識を持ちました。

 フレッシュマンセミナーでは、交流もかねてソフトボールをやりましたね。相手チームは、わたしの研究室の学生と研究員。研究室チームのほうが圧倒的に強かった。研究室チームの中には、無謀なスライディングで血をながしながらも楽しんでいる輩もいました。それに比べ、「1クラは、なんかまとまりのない、やる気があるのか!」という印象で、男子にも覇気が感じられませんでした。これにはちょっと失望したのを覚えています。

 しかし、この失望は、フレッシュマンセミナーで、テーマ別研究をチームを組んでまとめ、発表しましたが、この発表の熱気で吹き飛んだ気がしました。さすが、わたしの筑波大の後輩だけあると、少しだけにんまりしたのを覚えています。もっとも発表がわかりやすく、評判のよかったチームに、お酒が飲める年になったら、祝杯をあげようといったままで、実現できませんでした。これはこの4年間いつも気にしていたことです。大学最後の卒業研究発表会、その慰労会の席で、これを言うと、みな忘れていましたが、思い出させる結果になりました。中尾・沢谷チームだったね、ベストプレゼンテーションは。この話をしながら4年間のこんなにも早い時間の流れを感じました。みんなはこの間、先生、先輩、同級生、後輩たちとさまざまな思い出を作ってきたことでしょう。1クラ全員に会うのは、2年生の1学期の専門外国語以来です。1クラは、この4年間、中尾を中心によくまとまったクルーになったものだ。1年から4年まで中尾が継続してチームのまとめ役を果たしたのはたいしたものだ。まとめ役と言うよりはおせっかい役と言った方が適切かもしれないが。この席で、このクルーに胴上げされた。少しは体重はへったものの、まだ重いかと、上着を脱いでの胴上げだ。この記憶はわたしの1.4リットルの脳にしっかりと刻み込まれることになるでしょう。うれしかった。ありがとう。宙を舞いながらこの後輩たちの中から、これからの生物学類をしょって立つものが現れることを期待していた気がします。

 筑波大学生物学類も今年度29期生、そして来年度は30期生を迎えることになります。わたしは2期生で生物学類のパイオニアとして今に至ったと自負しています。この文章のはじめに、「・・結果よければすべてよしではなく、卒業までの過程をもう一度振り返って、これを機に今一度気を引き締め、みずからの4年間を見つめなおす・・」と言いました。皆さんは4年間、先生方、先輩そして後輩、同級生とこの筑波大という同じ環境の下で、時には釜の飯を同じくして、親交を深め、多くを語り合い、そして多くを学んできたことでしょう。君らは単に生物学類26期生というだけでなく、君ら26期生は私も含め、その前の25期にわたる先輩たちの流れのうえにあることをよく認識して欲しい。そのような流れの中で脈々と築き上げられてきた生物学類の伝統をそして誇りを感じ、その伝統と誇りにわたしは十分に、いつわりなく答えることのできる学生生活を送ってきたか、を振り返ってもらいたいということです。筑波大学生物学類で過ごした誇りを、そしてあなたの心に流れる生物学類の脈動を確かめて欲しいということです。

 生物学類1期生から29期生にいたる、連綿とつながる流れ、ようやく出来上がってきた伝統を、そして生物学類の誇りを今一度思い起こしてもらいたい。生物学類の伝統は、先輩から後輩へ、そしてまた後輩へと伝えられるのです。君たち26期生なくして、次世代へはこの伝統・誇りを伝えることはできないのです。筑波大、筑波大生物学類30年の血を引き継ぎ、次代へと伝えてもらいたい。皆さんはこれからさまざまな人生を歩んでいくでしょう。筑波大生物学類1期生、そして2期生から受け継がれてきた血はあなたのこころで永遠と流れ、動き続けていることを今一度感じてください。その血を受け継いだ友人、先輩、先生方が皆さんをいつも応援し続けます。

 卒業、おめでとう。

Contributed by Ryohei Kanzaki, Received March 27, 2004.

©2004 筑波大学生物学類